コーチングとは? コーチという言葉の語源とは? 誰でもできる「コーチング」のはじめ方 STEP1


コーチングとは?

『誰でもできる「コーチング」のはじめ方 STEP1 コーチングとは? コーチという言葉の語源とは?』では、「コーチングの成り立ち」についてご紹介したいと思います。


コーチングという言葉はもともと、ヨーロッパのハンガリーにある「コチ(Kocs)」という小さな村の名前に由来しています。コチは、現在は2700人ほどの村人が住んでいて、ハンガリーの首都「ブタペスト」から南西へ50キロくらいの場所にあります。

記録によると15世紀には、すでにこの村で「馬車」が作られていました。

馬車というと、現代の私たちの感覚からすると、エンジンのついていない車のような乗り物で、それを馬が牽(ひ)いているイメージがありますが、この時代の馬車というのは、大きな車輪のついた大きな荷台という感じです。当時はこれに人や荷物を載せて馬で牽き、運んでいました。


次第に、コチでつくられる馬車は非常に性能がいいという評判(性能というより、よくできていると表現した方が正しいかもしれません)から、1800年代前半には、急速に周りの国々や地域へと拡がっていきました。

このとき、馬車の性能や評判のよさから、コチの馬車は、村の名前がそのまま馬車の名前としても使われ、「コチ」という言葉は村の名前であるとともに、馬車を指す言葉にもなっていきました。


下の写真は、コチ村の博物館に実際に展示されている馬車です。私が現地に行ったときに撮ってきたものです。


コチの馬車
コチ(馬車)の絵
コチ(馬車)博物館
コチ(馬車)博物館


コチ(馬車)は、人や荷物を目的地まで運んで行ってくれる乗り物です。

そこから派生して、「人を目的地やゴールまで連れて行ってくれる人」のことを「コーチ(Coach)」と呼ぶようになりました。これがコーチの語源です。



コチ(Kocs)の看板
コチ(Kocs)
コチ(Kocs)
コチ(Kocs)

上の写真は「ハンガリーのコチ(Kocs)村」



ここで、コーチングの元祖であり、父とも呼ばれる「ルー・タイス」の登場です。

ルー・タイスは、アメリカのシアトルにあるケネディ高校の教師で、アメリカン・フットボール部のコーチを務めていました。

ルーは、自身の教え子であるフットボール選手達の能力やパフォーマンスを上げようと、試行錯誤を繰り返していました。その過程で、ワシントン大学のある客員教授から学んだことが、ルー自身の考え方、そして人生を大きく変えるものとなりました。教え子たちを大きな成長や変化に導き、その学びの深さを実感することができたのです。

それがスタートとなって、今度はアマチュア選手達やプロチームのメンタル強化法をビジネスマンや企業組織に適用し、人材の育成や企業の成長にめざましい成果を上げるようにもなっていきました。

「コーチング」として、社会一般に広く受け入れられ、重要性が認識されるようになったのです。


今ではアメリカのフォーチュン500の62%、NASA、連邦政府機関、州政府機関、国防総省、警察組織などが、ルー・タイスのプリンシプルやコーチングを採用しています。

※ フォーチュン500(Fortune 500)とは、アメリカ合衆国のフォーチュン誌が年1回編集・発行するリストの1つで、全米上位500社がその総収入に基づきランキングされています。



コーチング(Coaching)とは、ゴールを設定し、それを達成するための「マインドの技術」のことをいいます。

マインドとは、コーチングでは「脳と心」の両方を指す言葉です。物理的な存在である脳と、心という働き・脳の中の機能を併せたものを表わしています。

脳という物理的な存在があるから、心という機能が脳内で働くことができるし、脳も単に物理的な存在のみでは活動できません。脳内に心という何らかのプログラムがあるからこそ、脳という存在が意味を成します。

脳単体でも活動はできませんし、心という機能単体でも実質的な活動は生まれません。「脳」と「心」、両者がそろってはじめて、マインドという役割が果たされます。


人を単純にパソコンに例えるのは、いささか語弊というか無理がありますが、マインドの働きをパソコンに例えると、理解がスムーズで分かりやすいかもしれません。

パソコンは、「ハードウェア」と「ソフトウェア」の2つに分けられます。

ハードウェアとは、パソコンを構成する機器、物理的な存在、半導体や各種記録装置などを指します。ソフトウェアは、その機器内で動いているプログラムやデータのことです。ハードウェアとソフトウェアの両方があって、パソコンはその役割を果たすことができます。

マインドに置き換えてみると、やや大雑把ではありますが、ハードウェアが脳、ソフトウェアが心、ということになるでしょう。



コーチングにおけるゴールとは、「人生における目標・目的地」のことです。

あるいは、組織の場合、組織の向かうべき行き先、組織の目標のことです。


そして、コーチングにおけるゴール設定には、「ルール」が存在します。

そのルールを満たした人生や組織の目標のことを、ゴールといいます。

ゴールの設定やルールの詳細、さらにその達成方法については、次回以降のステップでご紹介していきます。



人生を変えたい。組織に大きな変革を起こしたい。

未来の自分を今よりももっとよくしたいと考える人が、無理をしたり、行動を急に変えようと試みることがあります。

一時的には、それでパフォーマンスが上がることもあるでしょう。しかし、時間が経つにつれ、次第に、また元通りの自分や状態へと戻っていってしまうことがほとんどです。

それは、人間には「ホメオスタシス」という強力な現状維持機能があるからです。


ステップを進んでいく中でこの働きについては詳しく説明していきますが、この維持しようとする中身は、「セルフイメージ」という脳内に記憶された、「自分とはこういう人間なんだという自分自身に対するイメージ、自分像」によって決まります。

人の無意識には、このセルフイメージに沿った自分や人生を構築していこうとする働きがあるのです。

ですから、セルフイメージを変えないかぎり、人間は決して変わることはできません。



史上最強のスイマー、水の怪物と称されたアメリカのオリンピック水泳選手、「マイケル・フェルプス」を例に考えてみます。

彼は、リオデジャネイロ五輪水泳競技終了の時点で、前人未到のオリンピック金メダル通算獲得数23個、オリンピックメダル通算獲得数28個という偉業を成し遂げています。


彼のコーチには、「マーク・シューベルト」という国際水泳界のトップコーチにして、ルー・タイスの愛弟子として知られる人物がついていました。

マーク・シューベルト氏は、冬の旅、白鳥の歌などの数々の名曲で知られる、オーストリアの大作曲家として大変有名なフランツ・シューベルトの末裔(まつえい)です。


マーク・シューベルトがマイケル・フェルプスのコーチについたのは、フェルプスがまだアメリカ国内の有望選手の一人にすぎなかった13~14歳の頃のことです。

それ以来、幼いフェルプス選手に、目標達成のためのコーチングが行われました。フェルプスの前人未到の実力を引き出した人物こそが、マーク・シューベルトだったわけです。


マーク・シューベルトがフェルプス選手に徹底させたこと、それは自らの成功イメージをビジュアライゼーションすることでした。

「ビジュアライゼーション」とは、自分がまさにそれを実体験しているかのように、リアルに頭の中でイメージをすることです。

フェルプス選手は毎晩ベッドに入ると、天井のあたりを見つめ、そこにオリンピックの決勝戦で泳いでいる自分の姿を詳細にイメージしました。他の出場メンバーは誰で、自分はどのコースを泳ぎ、どう競い合って勝つのか。ターンでタッチするタイミングを100分の1秒レベルで、リアルに思い描いていたのです。



このビジュアライゼーションというのは、「心の中の映像を置き換える」技術です。

後のステップで詳細に解説していきますが、人がマインドを変えていく、セルフイメージを望ましいものに入れ替えていくために最も強力かつ効果的な方法は、じつは、「心の中の映像を変えること」になります。

マイケル・フェルプスが毎晩ベッドの中で行っていた自己変革法はまさに、この心の中の映像を置き換えること、ビジュアライゼーションだったのです。


そして、その心の中での映像を置き換えるという理論的背景や、そのための効果的な数ある技術・手段・方法論・概念を体系化したものが、ルー・タイスの構築した「コーチング」なのです。



私たちが幸福でより豊かな人生を送っていくためには、何が必要で、どういった技術を駆使すれば、安全で確実に、ストレスもなく、自然に自分を変えていくことができるのか、そのエッセンスがすべて、コーチングには凝縮されています。

決して、ビジネス売上アップ法とかビジネスメンタル強化法などという狭い枠組みで、仕事のできる部下を育てるだけのシステムでも、部下の指導法でもありません。

コーチングはどのような人であっても、どのような職業や年齢層の人であっても、実践することができます。能力やパフォーマンスを確実に強化し、それだけではなく、人生を本当に豊かにすることができる、汎用性・普遍性・応用性のきわめて高い技術・方法論なのです。


コーチングによって、「内面から」自分を変えていきましょう。コーチングは誰にでも、すぐに実践していくことができます。




All meaningful and lasting change starts on the inside and works its way out.
Lou Tice

すべての意味ある永続的な変化は内側で起こり、外側へと広がっていく。
ルー・タイス



ルー・タイス

ルー・タイス(1936~2012年)
心理学者。米国自己啓発界、能力開発の世界的権威。コーチングの創始者。
アメリカ・ワシントン州生まれ。




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