補講 真の幸福な人生と組織

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補講 真の幸福な人生と組織

『誰でもできる「コーチング」のはじめ方 補講』では、「真の幸福な人生」と「組織のあるべき姿」、そして「モチベーション」について解説しようと思います。



私たちにとって、幸福な人生とはどのようなものでしょうか。

幸福の中身や定義は、人によって異なります。皆が同じではありません。趣味に没頭できる人生が最高の幸福と感じる方もいるでしょうし、ビジネスで成功を収めることが至福という方もいるでしょう。家族と過ごす時間が最も幸せと考える方も、もちろんいます。

人それぞれ、違います。


自分にとっての幸福が、必ずしも、相手にとって同じように幸福であるとは限りません。ですから、自分にとっての幸福とは、自分自身で自分なりの幸福を突き詰め、自由に選択し、それを手にすることと言えます。

成功という類のものも同様です。成功の定義は人によって違い、自分で決めることができます。


さらに付け加えれば、正義や真実といったものも、人によって異なるのです。自分の主義主張が、どんなに正しく真実であると確信していたとしても、それは「自分にとっての真実」に過ぎず、他人にそれを押し付けることはできません。

コーチングにおける自由意志とは、こういった「自分らしさ」を重視します。コーチングを実践することによって、「自分らしさ」という新しい標準をつくっていきます。


言い方を変えると、「他人のものさしを一切使わない、必要としない」ということでもあります。

「他人がこうしていたから、自分もこうしよう」とか、「この人に負けたくないし、この人の目標よりも上の目標を自分に課していこう」とか、他人が考えたり使っているものさしは、自分のゴールに対して一切関係ありません。

自分が人生の中で心から望んでいることにフォーカスします。





ここからはモチベーションと「創造的逃避」について学びます。


私たちのマインドというのは、他人に与えられた、もしくは、強要された目標やゴールでは、高い能力や創造性を発揮することはできません。

自分自身が心から望むこと、成し遂げたいと思えることでなければ、マインドはフルに働かないのです。


やりたいと思えないことを無理にやろうとすると、マインドは、それを避ける方向に創造力を働かせます。これを「創造的逃避(Creative Avoidance:クリエイティブ・アボイダンス)」といいます。

自らが自発的に行動しようと思えないことに対して、無理に取り組もうとすると、言い訳ばかりが脳裏に浮かんだり、無意識に関係のない行動を取ったりします。


気が進まないのに掃除をしなくてはいけないと思うと、掃除以外のことを急に思いついたり、他のことをやりたくなったり、集中できないという状態になります。

嫌いな仕事を仕方なく選び、「働かなければ」というスタンスで臨んでいると、極端に能率が落ちたり、生産性が低下したり、体調を崩したりする、仕事を休みたくなるのも創造的逃避です。

ですから、「しなければならない」という強制感を感じている状態では、人間は無意識の奥底に秘められた潜在能力やエネルギーを発揮し、創造性を解き放つことはできません。



このマインドの働きを理解するうえで、「モチベーション」について知ることはとても重要です。


モチベーションとは、「動機づけ」といった意味ですが、これには大きく分けて2種類あります。それは「内面」から自発的に生じるものと、「外部」からの圧力を受けて生じるものです。

内面から生じるものを「建設的動機づけ」、外部からの圧力によるものを「強制的動機づけ」といいます。



・ 「建設的動機づけ」、内面から自発的に生じるモチベーションについて

これは、「~したい」という「Want-to感情」による理想的な動機づけです。高い生産性やパフォーマンスを期待できます。ゴールや目標が心から達成したいと望んでいることだからこそ、内面から湧き上がるものです。

コーチングでは、この建設的な動機づけのもとで、ゴール達成を促すというスタンスを取ります。自発的なモチベーションは非常に高いパフォーマンスを発揮し、圧倒的な成果を生み出し、私たちを真に豊かで幸福な人生へと導いてくれる原動力となるのです。



・ 「強制的動機づけ」、外部からの圧力によって生じるモチベーションについて

これは、「~しなければならない」という「Have-to感情」によるものです。上司の命令で仕方なくやらないといけないとか、親に説教されて嫌々やっているというような「強制感」を感じています。

このような感情のもとに動機づけがなされる背景には、「やらなければならない、さもないと~」という恐怖や強迫観念が根底にあるからです。「さもないと、こうなってしまう」というその先の結果に対する恐れの心理があり、さもないと自分の自由や行動を「制限されてしまう」「禁止されてしまう」といった、自分にとっての予想され得る不都合・不利益な事態を避けるために起こるモチベーションです。

人間は、この「Have-to」感情や動機づけのもとでは、決して高い能力や創造性を発揮し続けることはありません。たとえ、強烈な指導や脅しなどがあって、パフォーマンスが上がったとしても、それは一時的なものに過ぎません。必ず逃避行動が現れます。



私たちが継続的に高い生産性やハイパフォーマンスを発揮するためには、モチベーションは外部からの圧力によるものではなく、内面から自発的に生じるもの、心の底から湧き上がるもの、「建設的な動機づけ」でなくてはなりません。

創造的逃避が起きたり、モチベーションが強制的動機づけ、つまり「しなければならない」という心理状態に陥ってしまうのは、その人の判断や行動が、セルフイメージやコンフォートゾーンに合致したものになっていないからです。

セルフイメージに合致したことであれば、自然にやる気とモチベーションは生じるので、私たちは「やりたい」と感じますが、セルフイメージに合致しないことは、無意識にそれを避けようとします。それが創造的逃避です。



「しなければならない」と思うことは、理性や常識、他人からの命令や強制、恐怖、強迫観念などによって、表層意識(顕在意識)がそう考えているだけで、潜在意識はその判断や行動を本音で望んではいません。それが、「しなければ」という感情の裏に隠されたマインドの働きです。

無意識や潜在意識が、しなければならないことをやることを望んではいない、もしくは、しなければならないことをやることによって生じる結果を潜在意識は望んでいないのです。

人は、「しなければならない」と思うことは、自ら進んで行動を起こしたりはしないし、やりたくないのです。


この場合、ゴールの世界のリアリティが足りないか、もしくは、そもそもゴール設定が間違っていて、その人にとっての本当にやりたいゴールではない可能性があります。

心から望む、達成したいと思えるゴールでなければ、ゴールに対して強い情動は生まれてきませんし、そのゴール達成に必要な判断や行動も、「~したい」「Want-to感情」に変わってはいきません。

自分にとって本当に必要なことや、やりたいことは、「しなければ」とは考えませんし、心から本当にやりたいことであれば、人は自ら進んでどんどん行動を起こしていってしまうものです。 やりたいと思えることに、「モチベーションが~」などと考える必要さえありません。

ゴール達成をした将来の自分の姿に、強い情動を感じなければ、ゴールのリアリティは高まりようがないのです。



私たちが人生をよくしたいとか、変えたいといったときに、行動を無理に起こそうとする人たちがいますが、それでは創造的逃避が必ず起こります。やる気が出ない、能率や生産性が極端に落ちる、集中力が散漫になる、つい無駄なことをしてしまう、空回りするなどということになるのです。

どうしても達成したいと思えるゴール、そしてそのゴールの世界の自分のセルフイメージやコンフォートゾーンに沿ったものであれば、私たちの行動は、その行動がゴール達成に必要な場合、自然と「~したい」に変わります。セルフトークも「したい」「選ぶ」「好きだ」という肯定的なものになります。

「~しなければならない」は、コンフォートゾーンから外れている証拠なのです。

積極性とは、ゴールに基づいたコンフォートゾーンの中に、自然に存在しているということです。


私たちのマインドは、セルフイメージに合致する、言い換えれば、コンフォートゾーンの内側に自分を収めるために必要なエネルギーのみを、自発的に生み出すようにできています。それがSTEP4で学んだコンフォートゾーンのカラクリです。

ですから、行動を無理に起こそうとするよりも、セルフイメージを変えることの方が先決です。



そして、ここからが創造的逃避が起きることによって生じる一番の問題点なのですが、やりたくないことを無理してやっていると、必ず、セルフエスティームやエフィカシーが下がります。

「自分はこれをしなくてはいけないんだ」「自分にはこの選択肢しかない」などと無意識に自分の脳に語りかけ、ネガティブな感情が湧き起こり、自分に対する自己評価を知らず知らずのうちに落としてしまっているからです。

ネガティブな感情とセルフトークが脳内に蔓延し、ゴール達成に必要なゴールの世界のリアリティは下がり、薄まってしまうのです。


結果として、しなければならないことをしていると、創造的逃避が起こり、ゴールに対して否定的なネガティブトークが蔓延し、ゴール達成が遠のくのです。

ですから、エフィカシーやゴールのリアリティ、セルフイメージを守り、高めていくためには、日常の行いをすべて、「やりたいこと、心から望むこと」に変えていくことが理想です。





上記の視点で組織や集団を見たときに、「エフィカシーの高い集団」と「コアーシブな集団」に分かれます。

「コアーシブ」とは、coercive、強制的な、威圧的な、高圧的なという意味になります。


コアーシブな組織や集団とは、リーダーが抑圧的に、あるいは恐怖や脅しを利用して人を動かす、権力を笠に着せたり報酬をちらつかせて、人を動かそうとする組織のことをいいます。

外部からの圧力によって生じる「Have-to感情」のモチベーション、強制的動機づけによって組織運営を行っています。リーダーが絶えず怒鳴っている、高圧的な命令ばかりをする、「失敗したらクビだ」と恐怖を植え付ける、成功したら報酬を与える、などといった組織運営です。


「内面から自発的に生じるモチベーション」と「外部からの圧力によって生じるモチベーション」、2つのうち、どちらの感情によって人が動くと、高い生産性やパフォーマンスが期待できるのかは明らかですが、組織運営においても同しなのです。

ですから、組織の運営における成果やパフォーマンス、営利企業であればイノベーション、生産性、売上や利益といったものを最大化していくためには、組織や構成員が本音で語る組織のゴール設定が必要不可欠になります。

そうした組織のゴールがきちんと設定されていないと、組織運営において必ず、「Have-to感情」によるモチベーションや創造的逃避が蔓延してしまいます。



じつは、この問題を解決する最大のキーポイントが何かというと、「組織の理念」なのです。


組織の起業や生存率における過酷さ、悲惨な状況についてあなたはご存じでしょうか。

新たに起業をして、5年後の6割近く、10年後には7割以上が、倒産もしくは廃業を強いられているのです。

これは、資金面であったり、経営戦略とか需給バランス、組織環境やモチベーション等々、多くの要因が関連しているのですが、それでも、最も根底にくる問題は何かというと、じつは「理念」が深く関わっていると考えられるのです。


理念とは「企業理念」とか「経営理念」などと、組織によって呼び方や内容が異なるのですが、理念とは、「創業者の想いや組織の存在意義、在り方、組織が最も大切にする土台となる考え方」のことです。

「何のために存在するのか」という「組織の真の目的」のことです。


壮大な理念や目標というのは、個人・組織を問わず、必ず描かなければなりません。人間は、思いもしないことは、決して実現できないからです。

理念という組織の根っことなる部分がしっかりと根を張っている。その組織の土台、ベースがきちんとあってはじめて、組織は社会や人々に生かされ存続し、繁栄し、社会に対して役割を担うことができるのです。



企業経営者や組織運営に携わる方、あるいは起業・独立を考えている方は、必ず、組織の「理念を明文化する」必要があります。組織の目的や運営や方向性を明確にする、組織の構成員がそれを理解し、一体性・一貫性を持って行動するためです。もちろん、コアーシブな組織カルチャーではなく、本音と本気、真摯な姿勢と心構えで、構成員全員が組織運営に携わるためでもあります。

そして、ここも非常に重要なポイントとなるところなのですが、発展的な組織というのは、必ず人々に役立つ視点、社会に大きく貢献するような内容になっています。「より多くの人々を喜ばせること」こそが、組織の存続と繁栄の源泉になっているのです。


理念の模範として最もよく知られるもののひとつに、「京セラ」という会社があります。誰もが知る名経営者、稲盛和夫氏が率いるあの「京セラ」です。日本航空JALの経営再建問題のときも、稲盛氏の活躍は大変よく知られています。



【京セラの社是と経営理念】

社是: ”敬天愛人”

常に公明正大 謙虚な心で 仕事にあたり
天を敬い 人を愛し 仕事を愛し 会社を愛し 国を愛する心

理念: 全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること


京セラの社是、経営理念のページ



STEP9のアファメーションのところでも、例に出しましたが、世界展開する高級ホテル「ザ・リッツ・カールトン」のクレド「ゴールドスタンダード」や、ヘルスケア商品の世界的企業「J&J社(ジョンソン・エンド・ジョンソン)」の「我が信条」も非常に練りこまれ、洗練され、磨き上げられた理念の模範として、大変に深い含蓄と学びのあるものと思います。


リッツカールトンホテルのゴールドスタンダード


J&J社の我が信条



そのほか、参考になる理念一覧





個人において、幸福と豊かさを両立しながらゴールを達成していくためには、ルールに則った正しいゴール設定が必要です。

組織においても、組織全体の幸福と豊かさを両立しながら繁栄し、ゴールを達成をしていくためには、理念とルールに則った正しいゴール設定が必要なのです。

それが私たちが幸福感を心から感じ、人生や組織や未来をより明るく喜びに満ちた世界に導いていく原動力となるのです。


あなたの人生がより幸福で、より感動と興奮に満ち溢れたものになっていきますよう、心から願っています。



ライフィングコミット 杉本浩章




It`s OK to be rich.
Lou Tice

豊かになってもいいんです。
ルー・タイス



Our greatest natural resource is the minds of our children.
Walt Disney

我々に与えられた最も偉大なる資源とは、私たちの子供心である。
ウォルト・ディズニー(映画監督、実業家)



I never did a day’s work in my life. It was all fun.
Thomas Edison

私は今まで一日たりとも労働などしたことがない。
何をやっても楽しくて仕方がないからだ。
トーマス・エジソン(起業家・発明家)



What is the seal of liberation? Not to be ashamed in front of oneself.
Friedrich Nietzsche

自由のしるしとは何か? 自分自身に恥じないことだ。
フリードリヒ・ニーチェ(哲学者)




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