ゴール設定 誰でもできる「コーチング」のはじめ方 STEP2


ゴール設定 誰でもできる「コーチング」のはじめ方 STEP2

『誰でもできる「コーチング」のはじめ方 STEP2 ゴール設定』では、「ゴール設定」について解説します。


コーチングとは、「ゴールを設定し、それを達成していくためのマインド(脳と心)の技術」であることは、STEP1の「コーチングとは?」でご紹介しました。

このステップではさっそく、ゴールの設定方法について見ていきたいと思います。



ゴールの設定には、ルールが3つあります。


1.ゴールは「現状の外側」に設定する

2.心から望むこと、成し遂げたいことをゴールとして設定する

3.ゴールは各方面にまんべんなく設定する (STEP8で解説します)



まずは、ルールの一つ目である、「ゴールは現状の外側に設定する」について解説します。


「現状の外側」とは、現在の延長線上の未来には到底起こり得ない、遠く高いゴールのことです。

達成方法が現時点では、まるで見えないようなゴールです。達成方法が最初から見えてしまうゴールは、現状の外側のゴールとは言えません。

言い換えると、現在のセルフイメージを大きく超えたところに設定すべきゴールです。


わざわざ、このような遠く高いゴールを設定するのには、認知科学に基づいた、きちんとした理由が存在します。

マインドは、「ゴールと現状とのギャップが大きければ大きいほど、エネルギーと創造性を生み出す」からです。



このカラクリは、STEP4のコンフォートゾーンで詳しく解説しますが、マインドのこの性質は、しばしば輪ゴムに例えられます。

輪ゴムは、端と端を離せば離すほど、両者の距離を縮めようと大きな力を発揮します。距離に応じて、大きな復元力を発生するのです。


この端と端をゴールと現状に見立てると、縮めようと生み出される力は、ゴールと現状との差を埋める、両者を引き付けようとするマインドの放つエネルギーと見ることができます。

それは、ゴールという脳内の臨場感世界と実際の現実世界との矛盾を解決しようとする働きです。脳から見て、脳の外部世界(現実世界)と脳内世界(セルフイメージに合致した世界)との間における、秩序の整合性を保つために起きる現象です。

要するに、ゴールと現状とのギャップを埋めようと、マインドはエネルギーと創造性を発揮しはじめるのです。


ですから、現状を大きく超える成長と変化、成功を掴み取るためには、現状の外側に高いゴールを設定する必要があります。



逆に、現状の内側、すなわち自身のセルフイメージを超えないようなゴールを設定すると、ゴールと現状との差、ギャップは小さいものになりますから、エネルギーと創造性は刺激されませんし、大きな成長と変化は決して期待できません。

低いゴールでは、低い意欲しか生まれないのです。

というよりも、現状の内側のゴールは、マインドをますます現状の世界やセルフイメージへと閉じ込め、縛り付けようとし、現状維持をますます強化します。現在の延長線上の未来が訪れることを、より確実にしてしまうのです。

それは、私たちの人生や未来の可能性に、蓋をしてしまうことに他なりません。

現状の内側のゴール設定は、何もしないよりも悪い結果を生み出し、返って、マインドに対しマイナスに働いてしまいます。しない方がいいということです。


例えば、「今の会社において、売上をもうちょっとだけ上げれば、会社の運営は楽になる。売上を1.5倍にしよう」などというようなゴールです。

このようなゴールを設定する背景には、「今の会社のポテンシャルや自分達の能力や組織運営を考えると、それくらいなら何とかなりそうだ」という現状にとらわれた、現在のセルフイメージに沿った判断をしているからです。

こうしたゴール設定の仕方、すなわち現状の内側のゴール設定では、現状を肯定し、現在のセルフイメージをますます強化し、現在の延長線上の未来を決定的にしてしまいます。俗に言う、「頭がかたい」、「創造性やイノベーションが発揮されない」という状態に陥るのです。

現状の内側のゴール設定をしてしまう組織には、大きな成長や変化が起きることは、まずありません。



現状の外側のゴール設定とは、現在の状態や自分達の過去に全くとらわれないものです。


人間の脳には指向性があって、どのような内容のものであっても、極端な言い方をすれば、身近なものでも何でも目標になり得ます。目標設定をすれば、私たちはそちらの世界に向かうことができます。

しかし、それでは私たちの可能性や真の能力を発揮することはできません。

現状の外側というルールを満たしたゴールを設定するからこそ、私たちは秘めたる可能性や潜在能力を解き放つことができるようになるのです。


先の売上のゴール設定の例で言えば、「売上を10倍にする」とか、「年商10億円」などと、先に思い切ってゴールや数値目標を設定することです。

過去や現状に一切とらわれず、現状の外側という思い切ったゴール設定をするからこそ、マインドはエネルギーと創造性を生み出し、大きな成長と変化を期待でき、私たちが本来もっている潜在意識の奥底に眠る、真の能力とパフォーマンスを発揮することができるのです。


私たちの可能性を切り開くのは、「現状の外側のゴール設定」なのです。



現状とは、今まで過去に蓄積してきた記憶の合成でできあがっています。それがセルフイメージの正体です。

人の無意識には、自分が考えている通りの判断や行動を起こそうとする性質があります。

セルフイメージというのがあって、「自分とはこういう人間だ」という自身に対するイメージ、自分像のことですが、人はこのセルフイメージ通りの人間になります。


コーチングの創始者であるルー・タイスは言います。

「人は、自分が考えた通りの人物になる」


ですから、今の現状というのは、人が過去に受け入れ蓄積してきた記憶の集まりをセルフイメージとし、それに見合った自分という存在によって、形づくられています。

その中身はと言うと、ほとんどは他人から言われたことや偶然の体験による記憶によって成り立っていますから、私たちは人生を自分が選択したつもりであっても、実際にはそうではない場合がきわめて多いのです。

他人から与えられたゴールではなく、自分自身の本当のゴールとするためにも、周りの常識や呪縛からかけ離れた、遠く高いゴールが必要なのです。




続いて、ゴール設定のルールの2つ目である、「心から望むこと、成し遂げたいことをゴールとして設定する」についての解説です。


長年のコーチングの経験や歴史、認知科学の発展の中で明らかなのは、人は、自分が心から望むことでなければ、幸福にはなれないし、パフォーマンスも上がらないということです。


子供の頃、何かに夢中になっていたときのことを思い出してみて下さい。

とても楽しかったと思いますし、自然に目が輝き、やる気が漲(みなぎ)り、モチベーションやパフォーマンスに恵まれていたはずです。


人は、やりたいことをやるから、自然に夢中になれるし、能力を発揮し、幸福なのです。

その姿は、他人から見たら、とてつもない努力を重ねているようにも映るかもしれませんが、本人は努力をしているつもりも、実感などもなく、単に熱中しているだけです。

モチベーションというのは、上げるものではなく、やりたいことをやって、勝手に上がるものです。


多くの場面で、パフォーマンスやモチベーション、そして、自己変革や創造力の発揮に悩むケースを見かけますが、それは、やりたくないことを、無理してやっているからです。

心から望むことをきちんとゴールとして設定していれば、目の前の行為や目的も明らかになりますし、自然とパフォーマンスも上がります。

そして、子供がのびのびと天才的な発想をするかのように、エネルギーと創造性も自然に発揮されます。




ゴールを設定したら、それはむやみに、他人に話してはいけません。


人には「ホメオスタシス」と言って、日本語訳では「恒常性維持機能」などと呼ばれますが、現状を強力に維持しようとする働きがあります。

この能力は、人類が進化の過程で獲得した、身を守るための生得的本能として、きわめて重要なものです。ホメオスタシスがなければ、人類はとっくの昔に絶滅していたことでしょう。

こうした生存欲求としての機能が発達しているからこそ、人類は見事に、古代や過去の様々な困難と時代の流れの中で生き抜き、現在の人類という子孫を生き残してきたわけです。


しかし、このようなホメオスタシスは、私たち人類が生き抜き、後世に子孫や遺伝子を残すという意味では非常に有用なものであったとしても、現代のように変化の目まぐるしい社会においては、成長や発展、進化の足かせになってしまうことが少なくありません。

「人は変われない生き物だ」、「人生が変わらない」、「あの人はいつまで経ってもあのままだ」みたいなことをよく言われますが、それはホメオスタシスによるものだったのです。

本人の努力不足によるものではありません。

端的に言うと、人間というのは本能的というか、脳の働きとして、変わりたくない存在なのです。

だからこそ、ゴール設定は、「現状の外側」という遠くて高いゴールが、どうしても必要になってきます。



コーチングの実践おいて、このホメオスタシスは、もうひとつの意味で問題が生じてきます。

この現状維持機能は、「他人に対しても現状維持を要求する」のです。

つまり、人は無意識の中では、自分は変わりたくないし、他人にも変わってほしくない。周りの環境もそのまま維持したい。そういう心の働きが、私たちのマインドにはあるのです。


高いゴールを他人に話せば、聞いた人はそのゴールに対し、無意識に不快感を感じます。

それがホメオスタシスの働きなのです。

夢を壊そうとする人、ゴールの達成を邪魔してくる人のことを「ドリームキラー」といいますが、そういった人たちが現われる背景には、こういった事情、マインドの性質が隠れていたのです。


皆さんも経験があるはずです。

「そんな夢のような話はやめなさい」、「もっと現実的なことを考えなさい」、「バカなこと言うな」、「そんな商売や選択は儲からない、食べていけない、やめておけ」

これらは全て、ドリームキラーの発言です。


受験の進路相談の場面では、次のような言葉が聞こえてきそうです。

「君にはその学校は無理だ」、「もっと現実的な選択をしなさい」、「もっと手堅い安全校を」、「自分の実力を過信してはいけない」などなど。


ですから、ゴールを設定したら、それはむやみに、他人に話してはいけません。



マザーテレサの言葉に、次のようなものがあります。


あなたの中の最良のものを。

人は不合理、非論理、利己的です。
気にすることなく、人を愛しなさい。

あなたが善を行なうと、利己的な目的でそれをしたと言われるでしょう。
気にすることなく、善を行ないなさい。

目的を達しようとするとき、邪魔立てする人に出会うでしょう。
気にすることなく、やり遂げなさい。

善い行ないをしても、おそらく次の日には忘れられるでしょう。
気にすることなく、し続けなさい。

あなたの正直さと誠実さとが、あなたを傷つけるでしょう。
気にすることなく正直で、誠実であり続けなさい。

あなたが作り上げたものが、壊されるでしょう。
気にすることなく、作り続けなさい。

助けた相手から、恩知らずの仕打ちを受けるでしょう。
気にすることなく、助け続けなさい。

あなたの中の最良のものを、世に与えなさい。
けり返されるかもしれません。でも、気にすることなく、最良のものを与え続けなさい。

最後に振り返ると、あなたにもわかるはず。
結局は、全てあなたと内なる神との間のことなのです。
あなたと他の人の間であったことは一度もなかったのです。

マザー・テレサ


マインドの働き、ホメオスタシスの性質を知ったうえで、これらの言葉を読むと、色々と見えてくるのではないでしょうか。

ドリームキラーを思わせる部分も見つかるはずです。



また、ゴールを他人に話してしまうと、それが宣言となってしまい、ゴールを話してしまったのだから、必ず達成せねばならない、「しなければならない」という「Have-to感情」が湧いてしまう可能性があります。

これは、自分自身に対し、プレッシャーをかけてしまう行為と言えます。

モチベーションやパフォーマンスとは、心からやりたいこと、「Want-to感情」でなくては発揮されません。のびのびとしていなくては、だめなのです。

Have-to感情は、生産性を著しく低下させてしまいます。人間のマインドの働きというのは、そういうものなのです。

最初はWant-toであったはずのゴールが、他人に宣言してしまうことで、いつしかHave-toになってしまったというのは、現実によく起こり得ることなのです。


そうならないためにも、ゴールはむやみに、他人に話してはいけません。




If you can imagine it, you can achieve it.
If you can dream it, you can become it.
Lou Tice

あなたが想像することは、現実世界で実現できる。
あなたが思い描くことができる夢は、叶えられる。
ルー・タイス




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