スコトーマとRAS 誰でもできる「コーチング」のはじめ方 STEP3


スコトーマとRAS 誰でもできる「コーチング」のはじめ方 STEP3

『誰でもできる「コーチング」のはじめ方 STEP3 スコトーマとRAS』では、「スコトーマ」について解説します。



「スコトーマ」という言葉があります。

コーチングでは、「心理的盲点」または「認知的盲点」という意味になります。


もともとはギリシャ語で、「盲点」を表す眼科の用語です。

目(眼球)の内側にある網膜には、画像が映らない部分(暗点、見えない部分)が目の構造上存在します。脳には画像補正機能があって、通常私たちがその暗点を意識することはありませんが、誰しも見えていないはずの部分が必ず存在します。

コーチングにおける「スコトーマ」は、そこから引用しています。



私たちが普段から見ている目の前の現実世界というのは、実は、見ている人によって見えているものが全く異なります。隣にいる人が自分と同じ角度で、同じ景色を見ていたとしても、見えているものは全く違います。

これは、脳には自分にとって重要なもの、緊急性の高いもの以外は見ない、というより見えなくなる仕組みがあるからです。

この見えなくなったもののことを、コーチングでは「スコトーマ」と表現します。自分にとって重要ではない遮断された情報が、盲点のように見えなくなるのです。


そして、脳には自分にとって重要なものは通し、そうでないものは遮断するフィルターの役割を持つ機能が備わっていて、それを「RAS(ラス)」といいます。

「Reticular Activating System」の略なのですが、日本語で「網様体賦活系(もうようたいふかつけい)」という訳語がついています。脳全体を網目のように覆っていて、脳の全部位を選択的に活性化するネットワークシステムであることから、このような名前がつけられています。



コーチングにおけるスコトーマは、視覚情報だけではなく、聴覚、触覚、嗅覚などの全感覚情報を含みます。

例えば、椅子に座っているときに、お尻の感触は普段は気になりませんし、自分に関係のない話や音は耳に入りません。新聞などを見ていて、興味のない記事は目に入りません。自分にとって重要なもの以外の情報は、RASというフィルターを通り抜けることなく遮断され、意識に上がりません。

私たちには、このような脳のフィルター機能が備わっているからこそ、集中したいときは重要なもの以外のものに意識を取られることなく、集中することができて、脳の処理がパンクせずに日常を過ごすことができるのです。


「カクテルパーティー効果」というものがあります。カクテルパーティーのように、たくさんの人がそれぞれ雑談をしている中でも、自分が意識を向けている人の会話や、遠くから呼ばれたとしても自分の名前は自然と聞き取ることができます。

これもRASによるものです。重要でない会話や音は、スコトーマに隠れ、気になりません。



さて、コーチングでこの「スコトーマの原理」がどうして重要なのかというと、先ほど、人には自分にとって重要なもの以外は見えないというお話しをしましたが、この自分にとって重要なものというのは、自分の信念や思い込みによって生じることが、認知科学によって明らかにされているからです。

例えば、やりたいことがあったとしても、常識にとらわれ、そんなものは出来っこないとか、セルフイメージや自尊心が低くて、自分には到底無理だなどと思い込んでいると、スコトーマの原理によって、できる方法やリソース、人脈などが、本当はすぐ目の前にあったとしても、見えなくなってしまうのです。

簡単に言うと、自分の信念や思い込み、セルフイメージに合致したものは自分(の脳)にとって重要なものとなり、よく見えますが、そうでないものは見えなくなります。


人間は、自分の信念や思い込みによって物事を見ているし、世界を認識しています。

コーチングの創始者であるルー・タイスは言います。

「スコトーマがあると、見たいものだけを見させ、聞きたいものだけを聞かせ、考えたいことだけを考えさせます。一つの意見・信念・態度に縛られると、自分の信じることと矛盾するものに対してスコトーマを築きます。ものを見るときに先入観にとらわれ、何をするにも習慣にとらわれます」


こうした信念や思い込みは、私たちの身の回りの世界を一変させます。

私は幸福な人生に恵まれていると考えていると、幸福に感じられるものに対してはスコトーマが外れ、幸福感を感じるものが目の前にたくさん現れます。幸福に感じられない出来事があったとしても、それは自身の信念に合致していないものなので、スコトーマを築き、幸福感を感じないものは見えなくなるのです。

そうして、身の周りの世界は、私たちの信念や思い込みどおりの世界でつくられていきます。


「私の周りには無能なやつばかりだ」、「この会社は本当に無駄で意味のないことばかりしている」、「この組織には未来がない」などと自分の周りや会社に対して否定的にとらえていると、本当は目の前に優秀な人物がいたとしても、会社の中での戦略や会議に今後の明るい未来への道筋や重要なヒントがあったとしても、まったく見えなくなってしまいます。

これが、RASの働きなのです。

スコトーマの原理によって、信念どおりの世界が私たちの身の回りに広がっていき、自分が考えている通りの未来と現実世界を引き寄せます。



スコトーマの原理を利用した、「自己充足的予言」という考え方がコーチングにはあります。

朝、「今日はいい日になる」と思っていると、必ずいい日になります。

悪いことに対するスコトーマが生まれ、悪い出来事が見えなくなる一方で、良いことに対するスコトーマが外れ、良いことばかりが見えるようになるからです。こうして、その日は必ずいい日になります。


この延長に、「私たちの人生はセルフイメージどおりの現実を引き寄せる」という真実が存在します。

「私は裕福だ、私は○○万円もの充分な稼ぎがある」と思っていると、もしくはそういうセルフイメージを自分に対して築いていると、そのような生活をするための方法だけが実際に目の前に現れ、実際にそうした生活を送るようになります。

逆に、それ以外の生活の仕方や稼ぎ方はスコトーマに隠れ、見えなくなります。セルフイメージどおりの生活に必要なことしか見えなくなるのです。

まさに、「心が現実をつくる」のです。



こうしたスコトーマの原理、認知のカラクリを考慮すると、人生をより豊かで実りあるものにしていくための秘訣が見えてきます。

それは、「ゴールが先、方法は後から」というものです。すべてはゴールありきということです。


多くに人々は、今の自分の状況や能力、資源やリソースを考えてから、「このくらいのことならできそうだ」という現状に合わせた目標設定をしようとします。

しかし、それでは私たちのマインドや無意識に秘められた潜在能力や可能性を充分に引き出すことはできません。

現状の内側にゴールを設定してしまうと、スコトーマが外れず、現状をさらに強化することしか見えなくなるからです。


先に、現状の外側に思い切ったゴールを設定して、するとそれに必要なものは後から認識が起こり、方法が見えてくるというのが、正しいコーチングの考え方なのです。

ゴール設定によって、その達成に必要なこと、例えば、「こういう人に会ってみよう」、「こういう戦略やアプローチを取ってみよう」、「これを学んでみよう」、「今の自分に本当に必要なものはこれだ」という具体的にやるべきことが、だんだんと目の前に姿を現すようになるのです。

ゴールを先に設定することによって、新しい認識がどんどん生まれていきます。

ゴール達成のための方法やリソースというのは、心配するものではなく、ゴールを設定することによって、「後から勝手に見えてくるもの」なのです。ゴール設定によって信念が大きく変わり、スコトーマが外れるからです。


人が大きな成長や人生に大変革を起こしたいと願った場合、自分にとっての重要なものを変えなくてはなりません。そうでなくては、今までの自分が見ていたのと同じ世界しか見えず、未来はいつまでたっても、今までの人生の延長にしかなりません。大きな変化への道筋はスコトーマに隠れ、見えなくなってしまうのです。

自分にとっての重要なものは変えるには、信念や思い込み、セルフイメージを大きく変える必要がありますが、コーチングの場合、それはSTEP2で解説した「現状の外側のゴール設定」をすることからはじまります。



現在の自分に見えているものや世界というのは、現状のセルフイメージに合致したものです。現在の自分にとって、何が重要であるかを決定しているのは自分自身であり、セルフイメージなのです。

しかし、ひとたびゴールを設定し、そのゴールに合致したセルフイメージの構築に成功すると、自分にとって重要なものは変わりますから、スコトーマの原理によって目の前の見えている世界は変わりはじめ、ゴール達成に必要なものが現れ、ゴールに必要のないものはスコトーマに隠れます。


私たちには予め、このような「ロック・オン」、「ロック・アウト」のシステムが生得的に備わっています。何かにロック・オンする(照準を合わせる )と、それと関係のないもの、相反するものはロック・アウト(遮断)されます。

こうして見てみると、人間の脳の働きには、自動追尾システム・自動操縦システムのようなものがあることが分かります。


私たちは社会生活をする中で、様々な出来事に出くわし、思ったり感じたりします。時には、悩んだり、傷ついたり、トラウマになってしまうこともあるでしょう。こういったとき、きちんとゴールが設定され、それに集中する意識をもっていると、ゴールの世界に関係のないものはRASによってフィルタリングされ、気にならなくなります。

ゴールが設定されていることは、人間関係や社会生活などにおいて、余計なものに意識を取られたり、不用意に傷つけられたりすることから自分を守っていく上で、とても大切なことです。

ゴール設定が私たちの心を、守ってくれるのです。

これがコーチングにおける、ゴール設定とスコトーマの関係です。




Invent on the way
Lou Tice

やり方は発明していく
ルー・タイス




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