コンフォート・ゾーン 誰でもできる「コーチング」のはじめ方 STEP4


コンフォート・ゾーン 誰でもできる「コーチング」のはじめ方 STEP4

『誰でもできる「コーチング」のはじめ方 STEP4 コンフォート・ゾーン』では、「コンフォート・ゾーン」について解説します。



「コンフォート・ゾーン」とは、「自分にとって居心地のよい空間や領域」のことです。

「慣れ親しんだ場所や空間」、「快適な領域」というとイメージが湧きやすいかもしれません。


いつも行き慣れている場所はとても居心地がよく、リラックスができるのに、慣れない場所に行ったり、普段会わないような人と会うと途端に緊張したり、不安になったり、居心地が悪くソワソワしたりということは、皆さんにも経験があることでしょう。

例えば、いつも接している人と話すときはリラックスして自由に話すことができるのに、普段絶対会わないような人、会社のトップとか芸能人、自分にとっていわゆる雲の上の人、会社の就職面接の場面などでは、途端に緊張して話すことができなくなったり、声が引きつったり、足がガクガク震えたり、話そうと準備していたことが思い出せなくなったりします。

普段、人前で話すことのない人が、急に大勢の人前に立つときもそうでしょう。


人はコンフォート・ゾーンの外側に出てしまうと、自分でも考えられないようなミスや失敗を起こしたり、自分に備わっているはずの能力を発揮することができなくなったり、急に物事が思い出せなくなったりします。

落ち着かない、冷や汗をかく、赤面する、体が固くなったり普段通りに思うように動かせなくなるなどの症状もそうです。

スポーツ選手や競技に参加する選手が、自分の行き慣れている場所や競技場に行くと、いつも通りの素晴らしいパフォーマンスを発揮できるのに、行き慣れていない場所や海外の競技場、見慣れない土地柄で種目に臨むと、なぜかいつも通りの力が出し切れない場面に、心当たりのある方もいると思います。

これが、コンフォート・ゾーンが私たち人間に及ぼす影響、作用なのです。



人間は無意識に、慣れ親しんだものや場所を求めます。

自分の身の回りにおいて、コンフォート・ゾーンを維持し続けようとする働きが、私たちには生得的に備わっているのです。「コンフォート・ゾーンの内側に安住したい」という無意識の働きです。

危険から身を守り、自らの命をより安全に生き長らえさせるために、人類が進化の過程で発達させてきた機能、生得的な能力と考えられています。


自分の無意識の判断や行動や習慣を思い返してみると、いつも行き慣れた同じような場所ばかりを選んでいることに気が付くと思います。

通い慣れた店、親しい友人、お決まりの場所や行きつけの店舗があるはずです。



そして、このコンフォート・ゾーンは、物理的な場所や空間のことだけを指しているのではありません。情報的な存在に対しても働きます。

学生時代の学校でのテストを思い出してみてください。いつも大体同じくらいの点数を取っていたのではないでしょうか。いつも英語で60点くらいを取っている人は、英語では60点がコンフォート・ゾーンなのです。


運がよかったり、たまたま得意なところがテストに出て、いつもより高い90点を取ってしまったとします。すると無意識では非常に居心地を悪く感じます。こんなのはいつもの自分じゃない、自分らしくない。そう無意識では強く不快感を感じます。

コンフォート・ゾーンの維持能力は非常に強力です。平均60点が本来の自分なのですから、90点を取ってしまったら、その次のテストでは30点くらいを取って、平均60点を維持しようとします。そうして、今まで通りの自分を取り繕う形にします。

これがコンフォート・ゾーンの働きです。人にはそれぞれ固有のコンフォート・ゾーンが、脳内に記憶として保存されています。


コンフォート・ゾーンから外れると、その結果が良かろうが悪かろうが、無意識には関係ありません。

無意識に善悪の判断などなく、単に元通りのコンフォート・ゾーンの内側に身を収めようとするだけです。



ここでは学校のテストを例に挙げましたが、皆さんの周りのありとあらゆるものが、コンフォート・ゾーンの内側に収まっています。

社会的地位やポジション、能力やパフォーマンス、生活水準や年収、銀行の預金残高、親しい人間関係、健康状態など、身の回りのすべてがそうです。


年収が600万円くらいの人は平均的にそれをずっと維持し続けますし、病の人は病であることが無意識では居心地がよいのです。恋人ができないと悩んでいる人は、無意識ではひとりが快適ということです。それがその人にとってのコンフォート・ゾーンだからです。

そんなバカなと感じられる方もいるかもしれませんが、それがマインドの働きであり、私たちの生得的な本能なのです。無意識の働きとは、そういうものなのです。



コンフォート・ゾーンの働きは、組織や何らかの集団においても、同じように作用します。

組織全体、何らかのチームや集団に対して、コンフォート・ゾーンが存在し、私たちは無意識に、そのコンフォート・ゾーンの内側に安住しようとし、それを維持しようとします。

言わば、「集団的なコンフォート・ゾーン」と捉えると、分かりやすいかもしれません。


組織全体での社内の風潮や慣習、社内環境や構成員の収入、売上や利益、取引先相手などがそれに当たります。

ひとたび誰かが、その集団のコンフォート・ゾーンから外れたことを考えたり、乱した行動を取ると、上司や周りの人間たちが急にそれを正したり、叱ったりする、ケチをつけてくる、阻止しようとします。

コンフォート・ゾーンから外れた状況になって、それをもとのコンフォート・ゾーンの内側の状態に戻そうとした無意識の働きがそうさせたのです。

「いつもどおりにやればいいんだ」、「そんなやり方はウチでは過去に誰もやったことがない」、「変なことを考えるな」、「ウチの会社では必要ない」、こうした言動が、コンフォート・ゾーンから外れようとした人を元の状態へと縛りつけるのです。



コンフォート・ゾーンという言葉はコーチング用語ですが、別の言い方をすると「ホメオスタシス・レベル」ともいいます。ホメオスタシス(恒常性維持機能)が強力な現状維持をすることは前のステップ2「ゴール設定」でお話しましたが、ホメオスタシスが維持する中身とは、まさにこのコンフォート・ゾーンのことだったのです。



実は、コーチングとは、「コンフォート・ゾーンを変える技術」と表現することができます。

そんなに強力に維持してくれるコンフォート・ゾーンなのですから、その中身さえ変えてしまえば、結果は後から勝手についてくる。身の回りの環境が自動的に変わってくれるという具合です。

年収や売上を上げたければ、コンフォート・ゾーンの中身を今までより高いものに設定しておけば、実際の状況がその設定した通りの状態に変化するという発想です。


コーチングにおいて、大変重要なマインドの仕組みをここで紹介します。

「マインドは、コンフォート・ゾーンを維持するためだけにしかエネルギーを生み出さない」


やる気やモチベーションに悩む方をよく見かけます。

このやる気やモチベーションというのは、コンフォート・ゾーンを維持するためのマインドの放つエネルギーのことなのです。

やる気が出ないとは、怠けているとか、そういう性格だとか、そういった類の話ではありません。単に今の自分が、コンフォート・ゾーンの内側にいるのだから、マインドは慌ててエネルギーを放つ必要がない。そういうマインドのメカニズムが働いているのです。


世間一般の解釈では、モチベーションという原因があって、成果という結果があるように思われています。

しかし、コーチングの観点では、そうではありません。

「コンフォート・ゾーンの内側に自分を維持しようとする働きが私たちのマインドにはある」という原因があって、「モチベーションや成果」という結果が生じるのです。因果が逆であることに注目して下さい。



STEP2のゴール設定では、マインドの放つエネルギーを輪ゴムに例えて、ゴールと現状とのギャップが大きければ大きいほどよいという説明をしました。

コーチングは、「ゴール設定」と「ゴール達成」の2つに集約されます。

まず、ゴールをルールに基づいて設定します。そして、そのゴールを達成するために、ゴールの世界をマインドの中でのコンフォート・ゾーンとします。そうすると、無意識はゴールの世界が居心地がよいとするマインドの働きと、身の回りの現状はそうなってはいないというギャップに、脳の内側と外側とで矛盾が生じ、マインドは慌てて大きなエネルギーを生み出して、ギャップを埋めようとします。

ゴールは遠ければ遠いほどよいとは、このギャップによって生み出されるエネルギーのことを言っています。


「認知的不協和」という現象があります。

アメリカの心理学者、「レオン・フェスティンガー」によって提唱された考え方ですが、心の中の映像やイメージと知覚した情報との間で矛盾があった場合、不快感が生じることを表す心理学用語です。

人は認知的不協和があった場合、それを解消しようと自身の行動や態度を変えると考えられています。

この現象は、コーチングやコンフォート・ゾーンを理解するうえで、非常に重要なものです。


いつも銀行口座の預金残高が1,000万円の人は、コンフォート・ゾーンがそうなっていて、何かの出費でそれが大きく減ってしまうと、認知的不協和が起き、マインドは預金残高を元通りの1,000万円に戻そうと急に働き始めます。

組織において、何かの要因で業績、売上や利益が大きく落ち込んでしまうと、社長をはじめ多くの構成員がこれはやばいと慌てます。認知的不協和が起きたのです。

そして、何とかして元の状態へと戻そうと、急にやる気を出したり、熱心に解決に取り組もうとします。


コーチングでは、このメカニズムをゴール達成に利用します。

すなわち、心の中のイメージをゴールの世界とする、コンフォート・ゾーンを現状からゴール側へとしっかりと移動させておく。

すると、ゴールの世界をコンフォート・ゾーンとするマインドと、目の前の現状との間に矛盾が生じ、認知的不協和が起き、マインドはその矛盾を解消しようとエネルギーと創造性を生み出します。

脳内でリアルに存在するゴールの世界によって、今までの現状に満足ができなくなったマインドは、慌てて修正を加えようとし、私たちはゴール達成に向かうことができるのです。



STEP3のスコトーマとRASでは、スコトーマの原理についてご説明しましたが、コンフォート・ゾーンとスコトーマの関係も重要です。

スコトーマとは心理的盲点のことで、自分にとって重要なもの以外はスコトーマに隠れて見えないのですが、これをコンフォート・ゾーンという言葉を使って表すと、「人間は、コンフォート・ゾーンの外側のことはスコトーマとなって見えない」ということです。


コンフォート・ゾーンは自分にとって居心地のよい領域のことですが、それはつまり、「自分にとって重要なものの集まり」、「自分にとって評価が高いものの集まり」と言えます。

ですから、コンフォート・ゾーンの内側のことはRASというフィルターを通り抜け、よく見えますが、外側のことは重要ではないので、RASによって遮断されスコトーマとなり、見えません。


年収500万円の人は、無意識にとって、その世界が重要であり評価の高い世界ですから、その世界を維持するための方法や稼ぎ方がよく見えても、それ以外の世界はRASによって遮断され、スコトーマに隠れ、よく見えません。

年収3,000万円に引き上げようと思っても、その人にとって年収3,000万円の稼ぎ方は一切見えないのです。

この場合、コンフォート・ゾーンを年収3,000万円の世界に設定する必要があります。そうしていかない限り、それを達成するための手段は、永遠に見えてこないのです。



このSTEP4では、コンフォート・ゾーンの働くメカニズムについて書きましたが、次のステップからはいよいよ、このコンフォート・ゾーンの中身を変えていく作業に入っていきます。

コンフォート・ゾーン、無意識が居心地がよいと感じるもの、それは無意識が自分にとっての真実だと思い込んでいることです。そしてそれは、「セルフイメージ」によって決められています。

セルフイメージとは、脳に記憶された「自分とはこういう人間なのだという自分自身に対するイメージ、自分像」のことです。人はこのセルフイメージ通りの人間になろうとします。

セルフイメージが、コンフォート・ゾーンという領域を決定します。ですから、コンフォート・ゾーンを変えるためには、セルフイメージを変えさえすればいいのです。


また、どこまでが心地よい領域で、どこから先がそうでない領域なのか、コンフォート・ゾーンの「境界」を決めているのも、セルフイメージに他なりません。

セルフイメージがコンフォート・ゾーンを決定し、身の回りの環境や現実世界とは、コンフォート・ゾーンの反映なのです。

そういった、セルフイメージやコンフォート・ゾーンを高めるために必要なことを、今後のステップでは学んでいきます。


コンフォート・ゾーンの世界と、私たちが望んでいるものや意識的に願っている世界とが異なった場合、人は幸福にはなれないでしょう。望んでいる世界は実現しないからです。

しかし、意識の世界の理想(ゴールの世界)と、無意識の世界の理想(コンフォート・ゾーンの世界)とが合致したとき、その人の周りは、その人にとっての理想的な世界となります。それはとても幸福な世界であるはずです。

コーチングは、それを実現するための科学的な技術、マインドの自然な働きに則った方法論なのです。




We behave and act, not in accordance with the truth, but with the truth as we believe it to be.
Lou Tice

人間は、本当の真実ではなく、自分が真実だと思い込んでいることに基づいて行動している。
ルー・タイス




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