エスティームとエフィカシー 誰でもできる「コーチング」のはじめ方 STEP5


エスティームとエフィカシー 誰でもできる「コーチング」のはじめ方 STEP5

『誰でもできる「コーチング」のはじめ方 STEP5 エスティームとエフィカシー』では、「セルフ・エスティーム」と「セルフ・エフィカシー」という概念について解説します。



ゴールを達成していくために必要なこと、それはコンフォートゾーンをゴールの世界にすればよい。そうすると、無意識はゴールの世界が居心地がよいと感じるため、ゴールを達成するためにマインドはエネルギーを生み出し、現状とのギャップを埋めようとする。

それがコンフォートゾーンの働くメカニズムを利用した、コーチングにおけるゴール達成の方法であることをSTEP4のコンフォート・ゾーンでは説明しました。


コンフォートゾーンを形成しているのは「セルフイメージ」です。

セルフイメージをゴールを達成できる自分に高めていく、これに必要な要素を、今後のステップではご紹介していきます。



このSTEP5ではその要素として最も重要なこと、「セルフ・エスティーム」と「セルフ・エフィカシー」について解説します。


セルフ・エスティームとは、自尊心のこと、「自己肯定感、自分のポジションや社会的位置に対する自己評価」です。

セルフ・エフィカシーとは、自負心のこと、「自己効力感、自分の能力に対する自己評価」です。


この2つを高めていくことによって、セルフイメージが上がり、ゴールに基づいたコンフォートゾーンにリアリティを与え、臨場感あふれるものにすることができます。



人は、セルフ・エスティームやエフィカシーが高いと成功します。ゴールを達成できる人になる、なりたい自分になれるのです。

人間の潜在能力を引き上げる方法というのは、色々あるのですが、その中でも単純かつ強力な方法は、「自分は優れている」「自分には能力がある」と自分に価値を認めることです。


社会の一般的な感覚で言うと、「成果を出すようになると自己評価が上がる」「成果を出したからこそ、自己評価が高い」、そのように考えている方が多いのではないでしょうか。

長年のコーチングの実践や経験、そして、認知科学の成果で分かっていることは、実はその逆なのです。

「自己評価が高いから成功する」「セルフ・エスティームやエフィカシーが高いから成果を出せる」というのが事実であることを、ここでは強調しておきたいと思います。


そうなのです。成功している人、成果をどんどん上げ、ゴールを達成していく人たちの共通点とは、「自己評価が高いこと」なのです。

「自分はすごいやつなんだ」「自分ならできる」「ゴールを達成できるにふさわしい自分、十分な能力と才能が自分にはある」、そう自分を心から信じ、セルフイメージを高めている人、こういう人が実際にゴールを達成していきます。


セルフイメージを高め、コンフォートゾーンをゴールの世界とする。その最大のキーポイントとなるのが、「セルフ・エスティームやエフィカシーを上げること」なのです。

コーチングでよく言われることなのですが、「コーチの最大の仕事は相手(クライアント)のエフィカシーを高めること」、そのように表現されるくらい、自己評価は重要です。



謙虚を美徳として躾(しつ)けられてきたことの多い日本人にとっては、他人からの褒(ほ)めや賞賛に対し、「私なんかまだまだです」とか、「大したことないですよ」などと受け答えをすることがひとつの習慣になっています。

そのような受け答えになってしまう背景には、「あいつは調子に乗っている」とか、「いい気になりやがって」などと思われたくないという気持ちがあるからです。人間関係における、無用な軋轢(あつれき)を生まないためです。


しかし、これらの応対は、謙遜(けんそん)という意味では正解であったとしても、高いセルフイメージの構築やゴール達成という意味では、不正解と言わざるを得ません。

こうした言葉や行動は、自分に対し自己評価を下げてしまい、「自分は大したことのない人間なんだ」という低いセルフイメージを築いてしまいます。

次のSTEPである「セルフトーク」で詳しく解説しますが、人は、思ったり発した言葉どおりの人生を歩みます。

「自分は大したことのない人間なんだ」と思ったり、言葉で発していると、脳や無意識はその言葉を記憶として脳内に蓄積し、その言葉どおりの人格を形成し、人生もそうした言葉どおりのものになってします。

自分の脳や無意識に対して、「自分は価値のない人間なんだ」と語りかけているのです。


こうした事態にならないためには、他人からの褒めや賞賛に対して、セルフ・エスティームやエフィカシーを高めていくために、賞賛を素直に受け入れ、「ありがとう」と言えるようにすることが大切です。



「評価」と言うと、私たちはつい他人に評価を求めたくなります。

これは学校教育などで、評価は他人がするものだという習慣や刷り込みがあるからです。もしくは、文化という側面からも、評価とはそういうものだという信念を他人から受け入れてしまったからです。


多くの人は何かをやるにしても、他人の目を気にしたり、他人の意見や判断に耳を傾けたり、許可を取ることを前提に自身の行動を決めてしまいがちです。それが常識ということなのでしょう。自分の評価にしても、他人の尺度やものさしで、自分の能力を決定してしまいます。

学校のテストで点数をつけられ、順位を提示され、それをあろうことか自分の価値のように考えてしまうことに何の違和感も感じないことが、私たちには固定観念として存在しています。幼い頃からそのような環境で育ってきたのですから、無理もありません。評価とはそういうもの。それが常識。そのように私たちは信じ込まされてきたのです。


しかし、冷静に考えてみると、自分がどれだけ努力をして、人の見えないところで頑張ってきて、何かの目標を達成するために研鑽を積み重ねてきた自分、それを知らない他人が、自分の評価などを正確かつ正統にすることなどできるでしょうか。

努力というのは人の見えないところでするものが大半を占める場合が多いですし、相手の夢や目標を知らなければ、その努力や成果は他人が評価などできないはずです。

自分がどれだけ頑張っているのかを知っているのは、自分自身だけなのです。「評価は自分しかできない」ということです。



また、他人が自分をいくら評価してくれたとしても、それは今の自分や現状に見合ったものです。

私たちは現状の外側の世界、ゴールを目指しますから、他人の評価とは、私たちのゴール達成には何の関係もないことが分かります。


自分に対する評価というのは、自分で行うのです。「自己評価」というところが、ここでのポイントになります。

それは高慢な態度に出るとか、自意識過剰になるということではありません。

自分が価値ある人間であることに、強い自信を持つのです。自分で自分に許可を与え、「自分はできる、自分は価値あるすごいやつなんだ」と自分を認めます。

自分で自分に価値や評価を与えていいことを知ることが重要です。「セルフ・エスティームやエフィカシーは自分で上げる」のです。


そうして自分に価値を認め、自分が優れていることに自信を持っていれば、周りの人は自然に自分のところに集まってきて、自分の考えについてくるようになります。

セルフ・エスティームやエフィカシーとは、そういう働きがあります。

両者を高い位置に持ってきておくと、自分を取り巻く環境や、能力・パフォーマンスも、そして人生も自ずと素晴らしいものになっていきます。



この考え方は、チームや組織においても重要です。

自分の関わっているチームや組織、何らかの集団を思い浮かべてみれば分かると思いますが、例えば、自分一人だけがエフィカシーが高くて、セルフイメージもゴールに見合ったものになっていたとしても、自分以外の人達が自己評価が低いと、チームや組織全体で高いパフォーマンスを発揮することはできません。

組織であったら、組織全体が、というより理想としては組織に関わる人達すべてが高いセルフ・エスティームとエフィカシーを持っているから、組織としての高いゴールを達成できたり、社会的に大きな成功を収める、売上や利益目標を達成する、ものすごく大きな成果を残せるといったことにつながるのです。


このような集団的なエフィカシーのことを、「コレクティブ・エフィカシー(集団的エフィカシー)」と呼びます。

チームや組織のパフォーマンスを決定づけるのは「コレクティブ・エフィカシー」です。

ですから、その集団の中で一人ひとりがこの自己評価という考え方を学び、構成員同士でお互いがお互いを認め合う、尊重する、組織全体でコレクティブ・エフィカシーを高め合うような組織文化、コーポレート・カルチャーが醸成できれば、チームや組織全体として非常に高いパフォーマンスを発揮することができます。

組織における構成員ひとり一人が、組織のゴールを達成できるという強い確信と臨場感を持ち、組織全体で高いコレクティブ・エフィカシーを維持することが重要なのです。



セルフ・エスティームやエフィカシーが低い人の特徴も見ておきましょう。

セルフ・エスティームが低いと、自分のポジションや社会的位置に対する自己評価が低いですから、セルフイメージも下がり、向上心が希薄になります。

「自分は社会でこの程度の人間なんだ」というあきらめムードが無意識を支配し、己を高めようとする気が起きません。

こういう人が組織や集団で集まれば、当然、その組織や集団全体もセルフ・エスティームが下がります。

組織としての向上心がなくなり、高いゴールを設定する意欲も湧きません。組織としての可能性に蓋をするような言動や行動が目立ちますし、新規事業や新しい挑戦に向き合うこともなくなります。


さらに、セルフ・エスティームの低い人は、周りにセルフイメージの高い人がいると、コンフォートゾーンのカラクリが働いて、居心地が悪くなりますから、その人の足を引っ張ったり、自分をよく見せようと計らいます。

周りを自分のセルフ・エスティームやセルフイメージに合わせようとしてしまうのです。これは無意識のうちに起こることがほとんどで、本人は気づいていなくても、結果としてそのような行動や言動が起きるのです。


エフィカシー(自分の能力に対する自己評価)においても、同じことが言えます。

能力を高めようとする意欲が低かったり、能力の高い人に対し嫉妬し、その人を妬(ねた)んだり蔑(さげす)む。人の悪口を言ってばかりいたり、高いゴールを設定しようなどとしません。



これらセルフ・エスティームやエフィカシーを上げるためには、自分に対し、ネガティブな評価をしないことが、まず第一です。

自らを卑下したり、価値を下げたり、否定するような態度や言動を一切やめます。

自己評価というポイントきちんと押さえ、セルフ・エスティームやエフィカシーについて学び、自分や自己評価を高める意識と姿勢を持つことです。


ルータイスは言います。

「どうしたらあなたや子供たちにとって、より価値ある人生になるでしょうか? ネガティブな刷り込みに抵抗することを学ばなければなりません」


また、成功したときと失敗してしまったときの自分に対する姿勢や態度、言動も重要です。

成功したとき、うまくいったときは「自分らしい」「よくやった」「俺はすごい」などと自分を評価し、失敗をしたときは「自分らしくない、もう二度と繰り返さない、この次は必ず~するぞ」というような言葉がけ、セルフトークを自分に対し行っていきます。

チームや組織で集団的なエフィカシーを築いているときは、仲間が成功したら「君らしい」、失敗したら「君らしくない」などと言うようにして、構成員同士、お互いがお互いの価値や評価を認め合う、高いコレクティブ・エフィカシーを目指します。



こうしたポジティブな評価や言葉がけ、セルフ・エスティームとエフィカシーを高めていく、そのためには、まず高いゴールを設定することが前提です。

いくら自己評価が高くても、その使い道、方向性が示されていなくては、宝の持ち腐れになってしまいます。

「ゴールが先、方法は後から」なのですから、とにかくゴールを設定することが先決です。ゴールがなければ、何の意味もありません。


そして、次のステップで学ぶ「セルフトーク」が、セルフ・エスティームやエフィカシーの向上と非常に密接な関係にあります。お互いに大変大きな影響を及ぼし合います。

自分のセルフ・エスティームやエフィカシーがどういう状態になっているのか、自分のセルフトークを聞けば、それがよく分かります。

セルフトークを正しくコントロールすることが、自己評価を高めていく上での重要な位置を占めています。



STEP2のゴール設定のところで強調しましたが、ゴールはむやみに他人に話してはいけません。

むやみやたらにゴールを他人に話して、「もっと今の自分や周りを見ろ」などと否定され、セルフ・エスティームを下げてしまうことになりかねないからです。

「もっと自分の実力に素直になれ、自分を受け入れろ」などと勝手に自分の評価や価値を決められ、エフィカシーを落としてはいけません。

ここは、誰の言葉に耳を傾けるべきか、よく吟味してみる必要があります。間違っても、ドリームキラー(夢を追うことを邪魔してきたり、壊す人達のこと)の言葉を信じてはいけません。



このようにして、セルフ・エスティームやエフィカシーを上げていくと、セルフイメージも高まって、ゴールの世界にふさわしい自分へと成長していくことができます。コンフォートゾーンをゴールの世界へと広げることができます。

脳や無意識にとっても、ゴールの世界が居心地がよいと感じ、マインドは現状を突破してゴールを達成するために必要なエネルギーを生み出し、創造性を発揮し始めます。


コンフォートゾーンとスコトーマの関係を思い出してみて下さい。

STEP4のコンフォート・ゾーンで解説しましたが、人間はコンフォートゾーンの外側のことはスコトーマとなって見えませんが、内側のことは自分にとって重要なことですから、よく見えます。

セルフ・エスティームやエフィカシーを高めていくことで、コンフォートゾーンがゴール側に着実にズレていくわけですから、ゴールを達成するための具体的な方法が見えてきたり、新たなゴールを発見することができるようになります。




Mother Teresa said,
I can do things you cannot, you can do things I cannot;
together we can do great things.
Lou Tice

マザーテレサは言いました。
「私にはあなたにできない事ができるし、あなたには私にできない事ができます。
だから、私たちが共にすれば、とてもすばらしい事ができます」
ルー・タイス



When we go into that new project, we believe in it all the way.
We have confidence in our ability to do it right.
And we work hard to do the best possible job.
Walt Disney

新しいプロジェクトをやると決めたら、とにかく信じ込むんだ。
我々にはそれを上手くやり遂げるだけの能力があると信じるんだ。
そして、可能な限り最高の仕事をするんだ。
ウォルト・ディズニー(映画監督、実業家)



Don’t compare yourself with anyone in this world…
if you do so, you are insulting yourself.
Bill Gates

自分をこの世の他の誰とも比べてはいけない。それは自分自身を侮辱する行為だ。
ビル・ゲイツ(実業家、篤志家、プログラマ)



To be yourself in a world that is constantly trying to make you something else is the greatest accomplishment.
Ralph Waldo Emerson

絶えずあなたを他の何者かに変えようとする力の働く世界の中で、自分らしくあり続けることは、それは最も偉大なことだ。
ラルフ・ウォルド・エマーソン(思想家、哲学者、作家)




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