STEP7 ビジュアライゼーション

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STEP7 ビジュアライゼーション

『誰でもできる「コーチング」のはじめ方 STEP7 ビジュアライゼーション』では、「サブゴールの設定」と「ビジュアライゼーション」について解説します。



ゴールを達成するために最も重要なことは、「ゴールの世界のリアリティ」です。

それは、ルータイスのコーチングの核心は、「ゴールの世界を強くリアルに感じると、ゴールの世界が現実になる」というものだからです。


ゴールの世界のリアリティを現状よりも強めることができれば、コンフォートゾーンは現状からゴール側へと移行していき、スムーズかつ自然で、無理なくゴールを達成することができます。

そのためのエッセンスとして、「セルフトークのコントロール」や、「セルフエスティーム・エフィカシーを上げること」がありました。

このステップでは、さらに、「サブゴールの設定」や「ビジュアライゼーション」について学びます。



「ルー・タイスの方程式」と呼ばれるものがあります。


I(Image)× V(Vividness)= R(Reality)


イメージに鮮明さが伴うと、リアリティになる。

鮮明で明確なイメージの描写が、脳内のリアリティをつくります。リアリティとは脳内におけるその人にとっての真実のことで、自分自身の在り方と、そこから見える世界の姿です。


人間は、脳内に蓄積されたリアリティに従って判断し、また行動します。

脳内に描かれたゴールの世界、もしくはその世界にいる自分の姿にリアリティが与えられると、それらがコンフォートゾーンとして選択され、私たちはスムーズにゴール達成へと向かうことができます。リアリティのないものは、どんなに一生懸命にゴール設定しても、脳は自分にとって関係のないものと認識し、スルーしてしまうのです。

コンフォートゾーンというのは、いかに臨場感に満ちているか、リアルかによって決まるのです。


ゴールの世界を想像し、それを達成した世界にいるはずの自分、そのあるべきセルフイメージに強いリアリティを感じる。そうすることで、ゴールの世界をコンフォートゾーンとし、ゴール達成を現実のものとすることができるのです。


「エフィカシーを上げること」や「セルフトークをコントロール」することは、ゴール世界のリアリティを高めることに他なりません。

コーチングにおけるゴール達成の様々な方法は、「ゴールの世界の臨場感生成技術」と捉えると分かりやすいと思います。



しかし、ここで大きな問題が立ちはだかります。

ゴールというのは、「現状の外側」に設定するものです。

現状の外側にありますから、スコトーマの原理によって、ゴールの世界がどんなものなのか、どのような世界の姿をしているのか、大変イメージしづらいのです。

そのようなゴールの世界を、臨場感豊かにリアルにイメージすることなどできるでしょうか。

それは、ゴールにもよりますが、普通はできません。


例えば、「フェラーリに乗る」「フェラーリに乗って彼女とドライブする」といったゴールを設定した場合、フェラーリに乗った経験のある方は、すぐにイメージできるでしょうし、乗ったことのない人も、Youtube動画を観たり、ディーラーに何度も通ったりすることで、明確にイメージをすることができるでしょう。

しかし、「世界平和」とか、「世界中のすべての人達が成功と幸福を享受することのできる社会の実現」「全人類に充分な食料を提供する」「国家予算において黒字を生み出す」「イギリスの支配下からインドを救う(マハトマ・ガンジー)」などというような規模がきわめて大きく、視点や抽象度の非常に高いゴールの場合、ゴールは漠然としたものになりがちです。

こうしたゴールを設定した場合、ゴールの臨場感を上げることはとても難しくなりますし、ゴールの世界を強くリアルに感じることなど、とてもできません。


じつは、ゴール設定のルールである「現状の外側」という制約をきちんと満たせば満たすほど、ゴールの世界の臨場感は薄まっていってしまいます。リアリティなど、決して生まれません。

臨場感が上がらないのは当然なのです。

よく、「コーチングを実践していて、なかなかゴール達成に向かわない、きちんと正しくゴール設定をしているのに」という悩みを持つ方がいます。

それは、端的に言うと、ゴールの世界や、その世界にいるはずの自分に対するリアリティ、「臨場感生成に失敗している」ためなのです。

ゴールがルールを満たせば満たすほど、このような現象に陥りがちになります。


そうかといって、ゴールを下げたり、比較的達成しやすいものにしてはなりません。低いゴールでは、低い意欲しか生まれないからです。

ゴールを現状の外側に設定するのは、ゴールと現状とのギャップを大きくすればするほど、エネルギーと創造性が刺激されるという、コンフォートゾーンのカラクリがあるからです。

そして、現状のスコトーマやコンフォートゾーンを脱して、人生を大きく変革するためにも、必要不可欠なルールが、現状の外側なのです。



ここで、この問題を解決する、「サブゴールの設定」が非常に有効な手段となります。

サブゴールとは、「ゴールの世界を構成する一部分」、または、「ゴールを達成していく過程での中間点」のことです。

「現状の外側のゴールに必要な要素のこと」ととらえると、分かりやすいかもしれません。


そして、サブゴールは、「具体的かつ明確に設定」します。

ここがきわめて重要なルールになります。それは、ゴールの世界のリアリティを高めるためには、欠かせない条件だからです。ゴールの世界のリアリティを圧倒的に強めるための中心的な役割と言えます。



サブゴールの具体例について考えてみましょう。

ゴールを「年収 3,000万円の生活」とした場合です。

最初は、そのようなゴールの世界の生活をイメージしようとしても、よく分からず、漠然としてしまって、イメージができないかもしれません。現状の外側のゴールなのですから当然ですし、それでいいのです。

しかし、このままだとゴールの臨場感が上がりません。臨場感が上がらなければゴール達成はかないませんから、臨場感を高めていく必要があります。


どういう生活なのかと考え、イメージをふくらませていくうちに、そうか、こういう家に住んで、駐車場には○○のクルマが止まっていて、週末は海外に旅行に赴き、どのような人達とビジネスや友人関係を築いているのか、仕事や家族はどうなっているのか、将来の自分はどういうスキルや能力を身につけているのか、などとイメージを高めていきます。

この一つひとつが、サブゴールなのです。


憧れの人がいる場合、その人について調べてみるといいでしょう。どのような仕事をし、どのようなクルマに乗り、家や資産はどうなっているのか、余暇はどのように過ごし、時間をどのように使い、その人の目標はどういったものなのかを、自身に当てはめて考えてみるのです。


人によっては、財務に詳しい人なら別として、税金をどれくらい払い、どの程度のお金は自由に使えて、どのくらいは経費に計上するとか、いくらを家賃や食事や趣味に使えるかなどは、全く想像ができないかもしれません。

しかし、例えば税理士の方に相談をしたり、そういう生活をしている人達の実体験の話を聞いてみたり、本で読んだりして、自身で多くの経験や体験、知識を積み重ねていくうちに、ゴールの世界がだんだんと明快に見えてくるようになるものです。



大切なのは、「ゴールが先、認識は後から」です。

ゴールがなければ、一生そのような世界は認識できないものになりますし、見ようとさえもしません。ゴールさえあれば、ゴールの世界がだんだんと明確に見えてきますし、サブゴールの設定とは、そういうものなのです。


ゴール設定の内容や仕方によっては、サブゴールの数が多くなったり、数え切れないほどになる場合もありますが、それで正解なのです。サブゴールを数多く設定することによって、ゴールの世界のリアリティはより高まるからです。

サブゴールをどんどん書き出していってみることが大切です。



サブゴールの設定は、組織の場合においても、まったく同じです。

組織における構成員、部署やチームや役職、「それぞれの役割ごとでの具体的に成し遂げるべきこと」がサブゴールになります。


組織がゴール達成に向かっていく過程で、構成員は何らかの役割やポジション、部署やチーム、ユニット等に属します。その中で、彼らにはそれぞれの「与えられた役割ごとの、為すべき明確な目的地」があるはずです。それがサブゴールです。

世間一般に、なじみの深い言葉を使えば、具体的な短期目標や中期目標がそのひとつです。

サブゴールが具体的かつ明確に定まっていることで、部署やチーム内での構成員の目指すべき目的地がはっきりとし、構成員同士の齟齬(そご)がなくなり、組織全体のゴール達成に向けて、構成員が一体感、一貫性をもって行動することができるのです。



繰り返しになりますが、「サブゴールは具体的かつ明確に」です。

ゴールが現状の外側ゆえに漠然としている以上、サブゴールも最初の時点では漠然としたものに見えるかもしれませんが、それでも、サブゴールは具体的かつ明確に「詰めていく」必要があります。この過程こそが、ゴール世界の臨場感生成そのものなのです。


サブゴールの設定によって、一気に、ゴールの世界のリアリティを高めていきます。



サブゴール自体は、その特性上、現状の外側のものになる可能性がありますし、そうではないかもしれません。

しかし、そこはあまり重要ではありません。重要なのは、サブゴールが「明確に」なっているかどうかという点です。

マインドの働きとして見る分には、現状の外側である方が望ましいと言えます。遠く高い目標は、エネルギーと創造性を刺激するからです。

しかし、サブゴール本来の役割は、ゴールのリアリティを高めることに尽きます。ですから、現状の外側かどうかというのは、あまり重要ではありません。それよりも、その内容を具体的かつ明確に詰めていくことに、力点をおきましょう。





そして、ここからは「ビジュアライゼーション」についての話になります。


ビジュアライゼーションとは、心の中に鮮明な映像を描いて、ゴールに必要な世界をリアルにイメージし、強い情動を伴って、ゴールの臨場感を高める方法のことです。

ゴール側のリアリティを強化し、セルフイメージやコンフォートゾーンを高いレベルに押し上げる強力な手段となります。まさに、ルータイスの方程式 「I(Image)× V(Vividness)= R(Reality)」を反映した技術と言えます。

「言語を使わない、自分の未来のリハーサル」と捉えると分かりやすいでしょう。

何度も繰り返し、脳内の自分にとっての当たり前の世界を変えて、自分らしさという新しい標準をつくり、現状のコンフォートゾーンをゴール側へと移行させていきます。


STEP1のコーチングの成り立ちで触れましたが、「史上最強のスイマー、水の怪物」と称されたアメリカのオリンピック水泳選手、「マイケル・フェルプス」が徹底していたことも、このビジュアライゼーションです。

ビジュアライゼーションは、自分がまさにそれを実体験しているかのように、リアルに頭の中でイメージすることです。

フェルプス選手は毎晩ベッドに入ると、天井のあたりを見つめ、そこにオリンピックの決勝戦で泳いでいる自分の姿を詳細にイメージしていました。他の出場メンバーは誰で、自分はどのコースを泳ぎ、どう競い合って勝つのか。ターンでタッチするタイミングを100分の1秒レベルでリアルに思い描いていたのです。



ビジュアライゼーションは、「視覚化」という日本語訳があるので、それを聞くと、映像イメージだけを想像しがちですが、コーチングにおけるビジュアライゼーションの場合、そうではありません。

視覚情報だけではなく、五感を通してゴールやサブゴールの世界をリアルにイメージします。映像、音、におい、感触、味覚といった五感情報を総動員して描くことで、臨場感をより高めるのです。





【ビジュアライゼーションのワーク】

リラックスして、キッチンに新鮮なレモンを1個取りに行くところを想像してください。冷蔵庫に向かって歩き、ドアを開いて果物ケースを引き出します。その中の、固く黄色いレモンを手に取ります。冷蔵庫のドアを閉めて、レモンをカウンターに乗せます。レモンを前後に転がすと、しだいに柔らかくなってきます。刃物類の引き出しを開けてナイフを取り出し、みずみずしいレモンを半分に切ります。片方を手に取り、ゆっくりと口に運びます。口に入れる前に、果汁の香りを楽しみます。そして、実際に味わってみます。さあ、大きくひとかじりしましょう。

(ルータイス著「アファメーション」p253より引用)







また、ビジュアライゼーションは、第三者の視点でイメージするのではなく、自分が今、達成しているという実感の伴った鮮明なイメージを、「自分の視点」で心の中に描くものです。

自分の視点から見て、どういう職業につき、どのように仕事をし、どういう家に住み、どのように家族と向き合い、ゴールの世界の自分が経営者であれば、社員の人達やクライアントとはどうなっているのかなどを、イメージしていきます。



ビジュアライゼーションというのは、実は、サブゴールとワンセットになる概念と言えます。

コーチングではよく、「ゴールを詳細にイメージして、ビジュアライゼーションしましょう」などと言われることがありますが、これは正確な表現ではありません。

ゴールは現状の外側にあるはずですから、ゴールの種類や内容にもよりますが、ゴールの世界を明確にビジュアライゼーションするというのは難しくなるはずです。

ゴールのルールである現状の外側という制約を満たせば満たすほど、あるいは、ゴールの抽象度が高くなればなるほど、その傾向は顕著です。

現状の外側というゴールの世界は、ハッキリと見えないので、当然と言われれば当然です。


ビジュアライゼーションする内容とは、ゴールがルールを満たせば満たすほど、ゴールというよりサブゴールの可能性の方が高くなります。


先の「年収 3,000万円の生活」というゴールで考えてみましょう。

例えば、年収500万円の人が、その世界を明確にビジュアライズすることなどできるでしょうか。

年収500万の人というのは、セルフイメージやコンフォートゾーンが年収500万円になっていますから、年収500万円の世界はよく見えても、それ以外の世界はスコトーマに隠れ、見えないはずです。ましてや年収 3,000万円の生活の明確なビジュアライズなど困難です。

人の認知とは、自身のコンフォートゾーンの内側に対してはスコトーマが外れ、視界が開けますが、コンフォートゾーンの外側に対してはスコトーマを築き、見えません。


ですから、ゴールを設定し、だんだんと見えてくるはずの、具体的かつ明確に設定されたサブゴールをビジュアライゼーションしましょうという話になるのです。

サブゴール(可能であればゴール)をリアルにイメージして、ビジュアライゼーションすることによって、ゴールの世界の臨場感を圧倒的に強める、コンフォートゾーンをゴール側に移行させ、ゴール達成を促します。



ゴールを設定し、リアリティを強めていけば、ゴール達成に必要なことや新たな情報を感知するようになります。スコトーマが外れ、ゴール達成の仕方がきちんと見えるようになるのです。

今の時点で達成方法が見えていないのは、ゴールが今はまだ現在のコンフォートゾーンの外側にあるからです。

それを解決する最も強力な手段が、サブゴールの設定とビジュアライゼーション、そして今まで学んできたセルフエスティームやエフィカシーを高める、セルフトークをコントロールすることなのです。


心の中の映像、言葉、感情の3つをすべて、ゴールに対して肯定的なものに置き換えていきましょう。

心の中のイメージやリアリティが置き換わると、コンフォートゾーンが変わり、現状に満足できなくなり、マインドは私たちに大きな成長と変革をもたらします。そうしてゴール達成を可能にしてくれるのです。




We move toward, and become like, that which we think about.
Our present thoughts determine our future.
Lou Tice

私たちは、自分が考えるものに向かい、自分が考える人物になる。
現在の思考が、私たちの未来を決定する。
ルー・タイス



A man is but the product of his thoughts. What he thinks, he becomes.
Mahatma Gandhi

人間はその人の思考の産物に過ぎない。 人は自分が考えた通りの人物になる。
マハトマ・ガンジー(弁護士、宗教家)



The future belongs to those who believe in the beauty of their dreams.
Eleanor Roosevelt

未来は美しい夢を信じる人たちのためにあります。
エレノア・ルーズベルト(アメリカ国連代表、婦人運動家、文筆家)



The most pathetic person in the world is someone who has sight, but has no vision.
Helen Keller

世界で最も哀れな人って、目は見えても、ビジョンのない人たちのことよ。
ヘレン・ケラー(教育家、社会福祉活動家)




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