ゴールの更新 誰でもできる「コーチング」のはじめ方 STEP9


ゴールの更新 誰でもできる「コーチング」のはじめ方 STEP9

『誰でもできる「コーチング」のはじめ方 STEP9 ゴールの更新』では、「ゴールの更新」について解説します。



STEP2のゴール設定STEP4のコンフォート・ゾーンのところで学びましたが、コーチングでは、「ゴールは遠ければ遠いほどよい」ということになります。

マインドというのは、コンフォートゾーンを維持する分のエネルギーしか生み出さないため、ゴールを近いところに設定し、その世界をコンフォートゾーンとしても、現状とのギャップが小さいため、マインドはエネルギーを生み出そうとはせず、大きな成長や変化を期待できないからです。

また、現状の内側やそれに近いゴール設定は、現状のコンフォートゾーンをさらにリアルにし、現状の外側に対するスコトーマをますます強め、現状維持をより確実なものにしてしまいます。現状の外側ではないゴール設定は、かえって良くないとさえ言えるのです。


ですから、ゴールは「現状の外側」に設定します。



さて、ゴールを現状の外側に設定し、その世界の臨場感を高め続け、そちらをコンフォートゾーンとすることに成功したとします。するとマインドは脳内のリアリティーと現状との矛盾に慌て、認知的不協和を起こし、その矛盾を解消しようと凄まじいエネルギーと創造性を発揮しはじめます。

それによって、様々なスコトーマが外れたり、今までやったこともないようなことに取り組んだりと、私たちに積極的な行動をとらせます。これがモチベーションです。ゴールと現状とのギャップを埋めようとするエネルギーがモチベーションなのです。

この点から、モチベーションとは世間で考えられているように、行動や成果の原因などではなく、認知的不協和による結果だということが分かります。


STEP2のゴール設定の復習になりますが、マインドのこの性質は、輪ゴムに例えられます。

輪ゴムは、端と端を離せば離すほど、両者の距離を縮めようと大きな力を発揮し、距離に応じて大きな復元力を発生します。

この端と端をゴールと現状に見立てると、縮めようと生み出される力は、ゴールと現状との差を埋める、両者を引き付けようとするマインドの放つエネルギーと見なすことができます。

それは、ゴールという脳内の臨場感世界と実際の現実世界との矛盾を解決しようとする、認知的不協和によるものです。



こうして急速にゴールへと近づいていくと、当然、ゴールと現状とのギャップはどんどん小さいものになっていきます。つまり、先ほどのマインドが生み出すエネルギーの仕組みを考えると、ゴールが近づくにつれて、エネルギーはどんどん失われていってしまうのです。

現状の外側であったはずのゴールの世界は、マインドの放つ凄まじいエネルギーによって、現状の内側へと移行していきます。それはゴール達成を望む私たちにとっては喜ばしいことですが、同時に、成長と変化の機会を失っていくことにもなります。


最近どうもエネルギーが湧かないな~といった症状があった場合、それは気がつかないうちに、ゴールの世界が現状の内側に移行してきている可能性があります。

このときに私たちに必要なこと、それが「ゴールの更新」です。


ちなみに、ゴールがきちんと現状の外側に設定されているにも関わらず、このような症状がある場合は、ゴールの世界の臨場感が低くく、コンフォートゾーンが現状のままになってしまい、マインドがエネルギーを生み出さない状態になっていますから、ゴール側のリアリティを強める必要があります。

今まで学んできた、サブゴールの設定、ビジュアライゼーション、セルフトークのコントロールを見直す必要性が出てきます。



ゴールを更新する場合について、もう一度、コーチングの最初のステップであるゴール設定のルールに立ち返ってみましょう。


ゴール設定の3つのルール

1.ゴールは「現状の外側」に設定する
2.心から望むこと、成し遂げたいことをゴールとして設定する
3.ゴールは人生(や組織)の各方面にまんべんなく設定する


このルールに基づいて、今一度、ゴールを見直していってみて下さい。

いつのまにか、現状の内側になってしまっているゴールはありませんか。現在の状態が時間の問題だけで自然にゴール達成へと導かれる状況に陥ってはいませんか。

現状の内側のゴールとは、達成方法が見えるゴールのことです。もしくは、現在の延長線上の未来にあるゴールのことです。


ゴールが現状の内側に移行してきていることに、自分では意外と気づかないことがあります。

マインドを上手に使えるようになると、ゴールの世界がいつの間にか現状の内側に入ってきていたというのは、よくあることなので、ゴールと現状との距離感の変化に気づきにくいのです。

コーチングに慣れ親しんでいくと、「変化し続けることが現状」という境地に達するゆえの宿命なのかもしれません。


マインドがつねにエネルギーを生み出し、私たちが大きな成長と変革をし続けていくためには、自身のゴールと、現状の自分が置かれてる状況との距離感を計りながら、それが近いようであれば、ゴールを更新することが必要です。

というよりも、「ゴールやサブゴールは常に更新し続ける」意識が大切なのです。


マインドを上手に使うとはこういうことですし、コーチングの中核をなす重要な考え方です。



ゴールを更新しないことによる典型的な症状として、「燃え尽き症候群」があります。

何か強い意志による目標があって、それを達成するためにものすごい努力と行動をしていた人が、ある日突然、抜け殻のようになってしまう事例は、皆さんの周りにも、結構目にすることがあるのではないでしょうか。

先ほどご紹介したマインドの仕組みを考えれば、ごく当然のこととして受け入れられると思いますが、ゴールの更新やバランスホイールを実践している人は、意外と少ないはずです。

コーチングというマインドの実践的な扱い方を、学校などで学ぶことはほとんどないでしょうから、無理もありません。


私も大学受験の後は、まさにこの燃え尽き症候群に陥っていました。

私は世間体ゆえに大学に入ることを目標としていたため、合格通知を見て、入学が決まった途端、何のやる気も失ってしまいました。そして体調を崩し、自律神経失調症や心身症の診断を受けることになったのです。

受験勉強をしていた頃は、受験に受かることだけを考え、それに集中し、その他一切のことをやらないと自分で決めていました。趣味もすべてあきらめました。体調もあまりよくなく、しょっちゅう胃痛や胃炎に悩まされていました。

今考えると、コーチングを知っていたら、趣味をあきらめる必要なんか全くなかったですし、むしろ趣味を続けていた方が、無意識は活性化し、より健康でいきいきとしていたはずです。

目標や、やる気を出す理由を失った私は、大学を中退することになります。あれだけ熱心に勉強をして、せっかく合格を手にした大学受験のための努力と時間は、何だったのだろうかという思いです。



人生において、ゴールや目標や生きがいと呼べるものが一つしかなく、そのたった一つの生きがいだけを糧に、生きてきた人の場合、そのゴールを達成したり、失ってしまった瞬間、生きる理由や意味を無くしてしまいます。

仕事一筋などという人もそうでしょう。そういう人が、例えば企業勤めで定年を迎えると、非常に危険な状態になります。

生きる意味を失うと、人は平均して18ヶ月で寿命を迎えると言われています。これは、ルータイスがアメリカの国家機関と共同でデータを取って、分かったことだそうです。


実は私の父親も、晩年に何を思ったのか割烹料理屋を始めましたが、しばらくして次第にやる気をなくし、店を閉めた1ヶ月半後に、急に一人で立ったり歩けなくなってしまいました。

そのあとに老人ホームに入りましたが、結局、店を閉めてから2年と3ヶ月で亡くなりました。


生きる意味を失うこと、コーチングでいうところのゴールや目標を失うことは、人生において最も避けるべきものなのかもしれません。

人生を健康に過ごしたり、全うに過ごすうえで、ゴールの設定や更新、バランスホイールの実践こそが、燃え尽き症候群や抜け殻のような事態から、私たちを守ってくれるのです。



一度、燃え尽き症候群に陥ってしまうと、大変厄介です。

ゴールを達成したり、目標を失ったりすると、マインドはエネルギーを生み出さない状態になっていますから、いわゆる心の体力がなくなった形になります。

この状態で、「これから現状の外側にゴール設定をしよう」などという気持ちに、そう簡単にはなれないのです。意欲が湧かないのです。


現状の外側にゴール設定をするのには、それなりの心の体力が必要です。

何かしら他のゴールがあって、エフィカシーが高まっていて、精神的に充実している状態だと、スコトーマも外れやすく、ゴール設定やゴールの更新は比較的容易なのですが、燃え尽き症候群のような状態に陥ってしまうと、それは難しいのです。

ですから、ゴールの更新はゴールを達成する前に、早め早めに必ずやっておきたいものなのです。これも非常に重要な「マインドの上手な使い方」です。


燃え尽き症候群などに陥ってしまわないように、ゴールに近づいたり、もうすぐゴールに到達しそうだと思ったりしたときは、慌てて、早急に別のもっと先のゴールを設定し直さなければなりません。

ゴールやサブゴールは、常に更新し続ける意識が大切です。

個人のゴールに関しても、組織のゴールにおいても、まったく同じことなのです。



コーチングは、生きる価値やその意味合い、真の幸福を私たちに気付かせてくれます。

こういったマインドの上手な使い方を身につけていくことは、長く貴重な人生をより良く充実させて、豊かに過ごしていくうえで、本当に価値のあることだと思います。




Disneyland will never be completed. It will continue to grow as long as there is imagination left in the world.
Walt Disney

この先、ディズニーランドが完成することは永遠にないだろう。この世界に想像力がありさえすれば、それは永遠に進化し続けるだろう。
ウォルト・ディズニー(映画監督、実業家)



It is not a shame if others are superior to you.
but it is if you this year is inferior to you last year.

他人と比較して、他人が自分より優れていたとしても、それは恥ではない。
しかし、去年の自分より今年の自分が優れていないのは、立派な恥だ。
ラポック(イギリスの探検家)



A man who dares to waste one hour of time has not discovered the value of life.
Charles Darwin

時間の浪費をいとわない人がいたとしたら、その人はまだ人生の価値に気づいていない。
チャールズ・ダーウィン(自然科学者、地質学者、生物学者)



It is high time that the ideal of success should be replaced by the ideal of service.Try not to become a man of success but rather to become a man of value.The value of a man should be seen in what he gives and not in what he is able to receive.Life isn’t worth living, unless it is lived for someone else.
Albert Einstein

成功という理想は、そろそろ奉仕という理想に取って替わられるべき時だ。成功者になろうとするのではなく、むしろ価値のある人間になろうとしなさい。人の価値とは、その人が受け取ったものではなく、その人が与えたもので測られるべきだ。人生とは、他の誰かの為に生きてこそ、その価値が見出される。
アルバート・アインシュタイン(理論物理学者)







【日本経済の停滞とマインドとの関連について】


日本経済のGDPは1990年頃をピークとしたバブル経済の崩壊以降、ずっと停滞を続けています。

※ GDP(国内総生産、Gross Domestic Productの略)とは、一定期間内に国内で産み出された付加価値の総額のこと


1980年の名目GDPは約250兆円、1985年は333兆円、1990年は約453兆円、1995年は512兆円、2000年は526兆円、2005年は524兆円、2010年は500兆円、2015年は531兆円、2017年は546兆円となっています。


1980年から1990年の10年の間に、日本のGDPは、倍近くに増えています。

ところが、その後の1990年以降のGDPはというと、500兆円前後をうろうろとする形です。ほぼ横ばいというか、「現状維持」に徹しています。



これは社会環境の変化を念頭において考えてみると、大変不思議なことです。


現代の私たち日本人のほとんどの人は、仕事などにパソコンを使います。パソコンの普及に特に大きく貢献したもののひとつは、何といっても、マイクロソフト「Windows95」の登場でしょう。文字通り、1995年のことです。

以降、社会や家庭へのパソコンの普及は、急激な発展を遂げてきました。パソコンやコンピューターの性能向上に、「ムーアの法則」がよく取り上げられます。

簡単に言ってしまうと、「CPUなどのひとつの演算処理ユニットに使われる半導体(トランジスタ)の数は、18ヶ月ごとに2倍になる」というものです。技術革新や設計・製造上の進歩で、演算処理の性能は、1年半で倍くらいになっていくのです。

2010年以降は物理的な設計の限界や、電子の運動に関する限界が見えてきて、この法則の意味合いが随分と変わってきましたが、それまではずっと、この法則が半導体設計において維持されてきたのです。


要するに、パソコンやコンピューターの性能は飛躍的な進歩を遂げている続けているので、私たちの社会における環境も劇的に改善されているのですから、私たち自身の生産性やパフォーマンスも圧倒的に向上するはずなのに、実際のGDPは停滞しているということです。



進化したのは、パソコンの性能だけではないはずです。パソコンが使える人の人口も、急激に伸びていきました。

1990年には、仕事でパソコンを使っている人がどれほどいたでしょうか。昔は、1人ひとつのスマートフォンどころか、携帯電話だって考えられなかった時代です。

現代は交通インフラもどんどん整備され、移動時間は大幅に短縮されていきました。様々な分野で目覚ましい技術革新が起き、社会全体で驚くべき進歩です。


どうして、これほどまでの技術的進歩があるにもかかわらず、私たちの生産性は、この20年以上、ずっと停滞を続けているのでしょうか。



ひとつの回答として、「私たちのマインドにおける問題」と捉えることができるのではないでしょうか。


1990年以前は、私たち日本人には、「現状の外側のゴール」があったのです。

真の豊かさを目指し、西洋の文化や技術に憧れを抱き、日本のリーダー達は大いなる野望や夢や希望を、心の中に思い描いていました。

それがまさしく、コーチングにおける現状の外側のゴール設定となっていたのです。


しかし、1990年以降の私たち日本人は、ある程度の豊かさを手に入れ、幸福感を感じ、それに満足をしてしまったのでしょう。ゴールを達成してしまったということです。

そして、コーチングでいうところの「ゴールの更新」に失敗し、それはすなわち、私たち日本人が新たな大いなる夢や希望を見い出せずにいる、現状維持に徹してしまったのです。

それが、1990年以降のGDPの停滞として表れていると考えられます。


今、私たちにまさに求められるべきもののひとつに、「ゴールの更新」があり、「現状の外側のゴール設定」が必要なのです。




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