エンド・ステート 誰でもできる「コーポレート・コーチング」のはじめ方 STEP6

エンド・ステート 誰でもできる「コーポレート・コーチング」のはじめ方 STEP6



【コーチングで世界を創造する】 杉本ワークス MIND Over The NEXT!!


『誰でもできるコーポレート・コーチングのはじめ方 STEP6 エンド・ステート』では、「エンド・ステート」という概念について解説します。



「エンド・ステート」という言葉を初めて聞いたという方は多いかもしれません。

この概念はパーソナル・コーチングには一切出てはきません。コーポレート・コーチングにおけるオリジナルな概念です。


「エンド・ステート(End・state)」とは、「組織における構成員、チームやユニット、それぞれの役割ごとでの具体的に成し遂げるべきこと」を指します。

組織がコーポレート・ゴールを達成していく過程で、構成員は何らかの役割やポジション、部署やチーム、あるいはメンバーやユニット等に属し、任務やミッション、職務を遂行します。その中で、彼らにはそれぞれの「与えられた役割ごとの、為すべき明確な目的地」があるというわけです。

エンド・ステートという概念があることで、ミッションを遂行する過程で、チームやユニット内での構成員の目指すべき目的地がはっきりとし、構成員同士の齟齬(そご)がなくなり、組織のコーポレート・ゴール達成に向けて、構成員が一貫性をもって活動することができるのです。


エンド・ステートは、ゴールと似ているように見えますが、まったくの異なる概念です。このふたつを混同してはなりません。

ゴールとは、ルールからも分かるとおり「現状の外側」なので、明確には見えない、漠然としたものです。明確に見えた時点で、それはゴールではありません。そして、ゴールは組織の構成員すべてが共有しているべき抽象度の高いものです。

対して、エンド・ステートは、ミッションごとに具体的かつ詳細に、非常に明確に見えるものです。ミッションの中でのそれぞれの役割において、「目の前の為すべきこと」を指す言葉だからです。


余談ですが、「ゴール」という言葉は略語で、正式には「ゴール・ステート(Goal・state)」といいます。

「ゴール・ステート」と「エンド・ステート」という概念、それぞれ別の意味合いや機能で、コーポレート・コーチングでは用いられています。



具体例で見ていきましょう。


具体例1は、「自動車メーカー」を例にとります。

コーポレート・ゴールは、「クルマ社会に変革と革新をもたらし、人々を未だかつて踏み入れたことのない世界と境地に誘い、人類と世界を次のステージへと導く」です。


あるミッションが経営トップから下されます。

「21世紀の課題である資源・環境問題に答えを出すべく、圧倒的な燃費性能のクルマをつくる」


このミッションを遂行するためには、燃費性能を現在の2倍くらいにしないといけない。そして、それを実現するには、従来の技術の延長線上にはない革新的な技術の開発が新たに必要であると、ミッションに関わる人達は判断しました。

コーポレート・ゴールは、「現状の外側」におくのがルールですが、まさしくそのゴールとルールに則ったミッション(サブ・ゴール)として、機能しています。


そうすると、「エンジン開発チーム」のエンド・ステートは、例えば、「リッターあたり〇〇kmの燃費性能を実現する内燃機関の開発・設計」となります。

「エクステリア開発チーム」のエンド・ステートは、「空気抵抗(空気摩擦・空力性能/特性)が○○のデザインを設計」することです。

「車体設計チーム」のエンド・ステートは、「シャーシ等、車体全体の総重量が〇〇kg以下になるための素材と十分な強度を両立する技術の開発、設計」です。


コーポレート・コーチングにおける組織運営では、「コーポレート・ゴールが現状の外側」にあって、そのゴール達成・実現のためには「ミッション」が存在し、ミッションを遂行するためにはそれぞれの役割やポジションが与えられた構成員の人達全員に、それぞれの「エンド・ステート」があります。

上記の例の場合、チームごとに具体的かつ明確なエンド・ステート、チーム内の人達で共有する成し遂げるべき目標があります。



具体例2は、「軍」を例にとります。

コーポレート・ゴールは、「戦争と争いごとのない平和な世界を実現する」とか、「自国民の安全保障と防衛」などが考えられます。


あるテロ国家が世界征服を目論み、新型の核ミサイルを開発しています。

事態を重く見た政府は軍に対し、そのテロ国家の企みを阻止しようと、少数精鋭の特殊部隊を編成し、ミッションを発動させます。


特殊部隊は、核濃縮施設を狙うことにします。

核燃料の濃縮・抽出に使われる遠心分離器(※)を使用不能にすべく、その装置を無効化するのがミッションです。

ミッションの遂行には、「部隊を施設に送り込むという役割(ヘリ操縦)の人」、「部隊の安全を守る役割の人達」、「装置を無効化する役割の人達」がいます。

それぞれの隊員達には、それぞれの「エンド・ステート」が存在します。

「部隊を施設に送り込むという役割(ヘリ操縦)の人」のエンド・ステートは、「部隊を施設に安全かつ迅速にヘリで運び、そして部隊を連れ帰ること」です。

「部隊の安全を守る役割の人達」のエンド・ステートは、「敵の隙をついて敵からの発見や攻撃に備え、場合によっては敵に対し応戦し、部隊の安全を確保」します。

「装置を無効化する役割の人達」は、「現場で装置の状態を素早く認識し、判断し、装置を確実に無効化するための措置を短時間に実行する」のがエンド・ステートです。

ミッションの遂行のためには、他にも様々な役割の人達がいて、それぞれに具体的かつ明確なエンド・ステートがあります。

このとき、当たり前ですが、「部隊を施設に送り込むという役割(ヘリ操縦)の人」は、ヘリの操縦がエンド・ステートであって、遠心分離器の無効化には基本的に関係ありませんし、彼のエンド・ステートではありません。自身の与えられた役割に対し固有のエンドステートがあって、それに集中するのです。




ここで、パーソナル・コーチングでは語られない、「ビジュアライゼーション」の本当の意味について考えます。


ビジュアライゼーションには「視覚化」という日本語訳がついているので、それを聞くと、映像イメージだけを想像しがちですが、コーチングにおけるビジュアライゼーションの場合、そうではありません。

視覚情報だけではなく、五感を通してリアルにイメージをします。映像、音、におい、感触、味覚といった五感情報を総動員して描くことで、臨場感を高める技術です。


コーチングではゴールを達成するために、「アファメーション」や「ビジュアライゼーション」を駆使し、臨場感を高め、ゴール達成を促しますが、実は、ゴールの世界をビジュアライゼーションすることは相当に困難なのです。

ゴールは現状の外側の世界であるため、明確には見えません。先ほども述べたとおり、明確に見えた時点で、ゴールではないのです。ステップ9でご紹介しますが、ゴールが明確に見えてしまったら、慌てて、「ゴールの更新」を行う必要があります。


ビジュアライゼーションとは「明確に視覚化し、臨場感を高める技術」であるため、ゴール世界のビジュアライゼーションというのは、論理的帰結として、無理があるのです。

よく、「ゴールを詳細にイメージして、ビジュアライゼーションをしましょう」などと言われますが、これは正確な表現ではありません。見えないものは、詳細にイメージしようがないわけですから。


では、本当のビジュアライゼーションとは一体、どういったものなのでしょうか。



ビジュアライゼーションすべき内容とは、実はゴールではなく、「エンド・ステート」なのです。

ビジュアライゼーションは、エンド・ステートとセットになる概念だったのです。

ただ、パーソナル・コーチングの場合、複雑性や混乱を避けるために、あえてエンド・ステートという概念は用いません。そのため、ビジュアライゼーションの本来あるべき姿や意味合いは語られることがなかっただけなのです。


エンド・ステートとは具体的に成し遂げるべきこと、目の前の為すべき明確な状態や目的地を指す言葉ですから、エンド・ステートはビジュアライゼーション可能というわけです。

エンド・ステートを詳細にイメージし、ビジュアライゼーションすることによって、エンド・ステートの臨場感が高まり、ミッションやコーポレート・ゴールの達成を成功させることができるようになるのです。



パーソナル・コーチングにおいても、エンド・ステートという概念は一般には出てきませんが、もちろん適用可能な概念です。

例えば、「世界から飢餓と貧困をなくす」というゴール設定をしたときに、その過程で、「○○大物政治家の秘書となって、政治の世界観と実情を肌身で感じる」ことが必要と考えた場合、「秘書になること」がその人のエンド・ステートとなるわけです。

そして、○○政治家の秘書となることを目標に、ビジュアライゼーションをするようにします。


もう一つ例を挙げます。

「史上最強のスイマー、水の怪物」と称されたアメリカのオリンピック水泳選手、「マイケル・フェルプス」。リオデジャネイロ五輪水泳競技終了の時点で、前人未到のオリンピック金メダル通算獲得数23個、オリンピックメダル通算獲得数28個となっています。

彼のゴールが、「オリンピック史上最多の金メダル獲得」みたいなものであったかというと、そうではありません。金メダルを取ることは、もはや彼にとっては現状の外ではなく、ゴールにはならないのです。

幼いころの彼は、確かにそういったゴールを設定していましたが、まだオリンピックにも出ていない頃は、十分に現状の外側と言えるでしょう。しかし、現時点ではゴールにはなり得ません。

彼のゴールは、「水泳を通じて、アメリカ人全体の健康を増進させること」と本人が述べています。

フェルプス選手は毎晩ベッドに入ると、天井のあたりを見つめ、そこにオリンピックの決勝戦で泳いでいる自分の姿をイメージしました。他の出場メンバーは誰で、自分はどのコースを泳ぎ、どう競い合って勝つか。ターンでタッチするタイミングを100分の1秒レベルでリアルに思い描く。これはゴールではなく、エンドステートなのです。


このように、「エンド・ステート」と「ビジュアライゼーション」は、セットとなる概念なのです。



(※)天然に存在するウランは、「ウラン238(存在率 99.27%)」と「ウラン235(0.72%)」、およびごく微量の「ウラン234(0.006%)」という同位体の混合物である。

同位体(どういたい)とは、同じ原子番号を持つもの(陽子の数が同一)で、中性子の数が異なる原子の関係をいう。

核分裂を起こすのは「ウラン235」だけであるため、ウランを核燃料として使用するためには、ウラン235の濃度をある程度まで高める必要がある。

ウランの同位体はそれぞれわずかな質量の違いはあるものの、化学的性質は同じなので、化学的な方法での分離は難しい。そこで同位体間の質量差を利用して分離する方法が色々と開発されているが、代表的なものとして、質量差を直接利用する「遠心分離器」がある。




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